短編
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「もしかして、好きなの?おれのこと」
サンジの口から飛び出したのはそんな言葉だった、突然言われた言葉の意味が分からずに私は目を瞬かせる。好きに決まっているだろう、仲間なんだから、そんなの今更だ。昨日今日の仲間ではない、年単位だ。
「そういう好きじゃねェよ。恋愛的な、って言えば分かるかな?」
恋愛的、意味が分からない。何故、人間は男女の親しさを恋愛に直ぐに置き換えてしまうのだろうか。ロマンを求めるなら海にでも出たらどうなの、と普段なら言っている所だが此処は海のド真ん中、海賊船の甲板だ。空にはカモメまで飛んでいる。
「ないわね」
「いや、でもさ……」
「そこまで食い下がる理由は?」
根拠でもあるの、とサンジの碧眼を見つめれば、その碧眼は私の顔から逸れて徐々に下に下がっていく。それに釣られるように私の視線もゆっくりと下がり、ある一点で止まる。
「根拠っていうか……」
サンジの一回り大きな手が私の手を握る、離れていかないようにしっかりと指を絡められた手。
「……手を握ったから惚れているって?なら、私はナミのこともそういう意味で好きよ」
「あのね、ナマエちゃん」
そこからサンジが語ったのは最近の私の様子だ。曰くやたらとスキンシップを取ってくる、そして島のレディをナンパしていればスナイパーのような目付きでレディを睨み付け、腰に引っ掛けた武器に手を伸ばしているらしい。他にもいくつか言われたが、私が耳を疑ったのは先日の宴での出来事だ。
「……ナマエちゃん記憶飛んじまうぐらい酔っ払ってたからアイツらには口止めしたんだけどさ、もっと私でドキドキして、って、あの、押し倒して来て……お、おっぱいが顔に……っ、不可抗力とはいえ、ちょっとだけ触っちまって、あの、ごめんね?」
どう見ても私が悪い、酒に呑まれて絡むなんてどうしようもない。自己嫌悪を起こす私に向かってサンジは新たなトドメを突き刺した。
「あと、まだ言ってないんだけど」
「……また、何かしたの。私」
「おれといると君の頬が薔薇色になるんだ」
こんな風に、そう言ってサンジは手品のように背中から薔薇を一輪取り出した。
「キザ」
「はは、褒め言葉どうも」
「これじゃ、サンジが告白してるみたい」
「おれはずっと君からの告白を待ってるけど?一年近く我慢していたおれに慈悲を、レディ」
意地っ張りな私は手にある薔薇を握り締めて、その場を逃げ出した。薔薇が枯れるまでに今、自覚した恋心をちゃんと口で伝えられますように、そんな願いを込めて。