短編
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
サンジが不在の時にだけ振る舞われる私の料理は中々に評判だ、サンジのように凝ったメニューを作り出す事は出来ないが多少の家庭料理ならレシピを見ずとも作れる。だが、サンジだけはそれを知らない。私が皆に箝口令を敷いてるからだ、サンジにだけは私の料理の話をしないで、と。ルフィやチョッパーは意味が分からないといった様子で首を傾げていたが女性陣や大人組は恋人が一流のコックだと苦労するよな、と納得した様子で直ぐに了承してくれた。
サンジならきっと美味しい、美味しいとどんな料理でも食べてくれるだろう。野菜が不揃いでも端っこが焦げていても宝物のように味わって食べてくれる筈だ。
「……ハードルが高い」
優しい人に嘘を吐かせたくない、料理に関しては特にだ。
「なのに、どうしてこうなった……」
「ん?」
お行儀良く着席したまま、サンジは絶望顔を晒す私をキラキラした瞳で見つめてくる。そして、矢継ぎ早に質問を繰り返してくる。
「得意料理は?」
「何でおれだけ除け者なの?」
「一緒に作ろ?ね?」
「こないだ、あのクソゴムに作ったって聞いたよ」
ドアの向こうにいるルフィをドア越しにキツく睨む、こういう事が起こらないように口止め料という名の料理を食べさせたのにどういう事だ、と。
「ナマエちゃん?」
「あ、えっと、サンジに食べさせるにはお粗末っていうか……見窄らしいっていうか……」
そんな大したものじゃないの、と否定を繰り返す私にサンジは穏やかな視線を向ける。
「おれもクソジジイに味見してもらう時、緊張した」
「へ」
「コックに食わせるのって勇気がいるよな。下手なもん出すわけにもいかねェし、気取ったもん出した所で向こうの方が美味く作れる」
それにコクリと小さく頷いて、心が暴かれていくような緊張感と理解されているむず痒さを我慢するように膝の上で両手をギュッと握り締めた。
「コックも人間だからさ、他人が作ったあったけェ飯を食いたくなる時があるんだよ。恋人が作ったあったけェ飯ってだけでおれには何億ベリーの価値もある」
「ただの家庭料理よ?」
「やったね、君の故郷の味が知れる」
「……たまになら」
先程までずっと断る気でいたのに口から飛び出したのは真逆の肯定だった。食いてェ奴には食わせてやる、そう言っていたサンジの真似をするのも悪くないのかもしれない。