短編
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気分屋な恋人を持つと苦労するわね、そう言ってサンジのネクタイを自身の方に引っ張れば、サンジは自覚が無いとでも言うように首を傾げた。
「おれ?」
「私に他の恋人がいたらどうするの?」
「それは嫌だなァ」
その声はどちらかと言えば、今の状況を楽しんでいるようだ。普段は恋の駆け引きなんて知らないとばかりに押して押して、また押して、引く事を知らないこの男は本命に対しては駆け引き上手だから困ったものだ。それが何だか面白くなくて、サンジの口に自身の唇で蓋をしようとすれば、サンジの右手が私の唇にストップを掛ける。
「まだ、ね?」
潰れた唇を、うー、と拗ねたように突き出せば、サンジはくすくすと私の反応を見て笑う。
「おれのお仕事が終わるまでいい子に出来る?」
どの口が言うんだ、とピンヒールの先でサンジの足を軽く蹴れば、足癖の悪ィお姉様だ、と隠れていない方の片目が熱を帯びたように私を見る。最初に誘いを掛けたのはサンジだ、皆が座るテーブルの下で悪戯に動いたサンジの手はするりと私の内腿を撫でた。横に座るサンジを見上げれば、普段と変わらない表情で雑談に混じっては、ウソップの法螺話にツッコミを入れていた。皆が部屋を出て行くまで普段通りに振る舞っていた私と二人っきりになった途端、今までの悪戯は無かったかのように片付けを始めたサンジ。
「……こういうのって二人っきりになったら、盛り上がるんじゃないの」
「はは、確かに」
でも、一旦、冷静にならねェとナマエちゃんをちゃあんと味わえねェだろ、そう言ってサンジは煙草の煙を私の顔に吹き掛ける。ケホッ、と咳き込む私に向かってサンジは甘い顔をして、ごめんね、と悪びれる様子もなく謝る。
「お詫びに島でクソ甘ェ一晩なんて、どうかな?」
「島へのお誘いにしては手間取り過ぎね」
君がその気になってくれて嬉しいよ、と頭をポンポンと撫でてくるサンジの手に甘えるように自身の手を重ねると、上目遣いでサンジを見つめる。
「……島に着くまで全部お預け?」
「どこまでなら君は許してくれる?キス、それとも抱擁?それか、仲良く手でもお繋ぎしようか?」
「今更、紳士のフリをしたって遅いわ」
そう言って私はサンジの煙草を奪って口に咥える。サンジの顔に、フッ、と吐き出した煙は今夜を約束する合図だ。意味が伝わったサンジは意地の悪い顔をして、仰せのままに、たっぷりと可愛がらせていただきますよ、と口にした。