短編
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普段の甘やかしモードが恋しくなる程に今日のサンジはスパルタだ、私が片付けを放棄して思い出のアルバムに思いを馳せていれば頭の上に本が乗る。
「断捨離はどうしたのかな、ナマエちゃん」
「……休憩?」
「っ、くく、困ったレディだ」
口調はいつものサンジと何ら変わりない、穏やかなままだ。だが、サンジの腕の中で雪崩を起こしそうになっている本達は私が捨てる、捨てる詐欺を繰り返している本棚から溢れたものだ。テーブルや床に山を形成しては何処に何を置いたか忘れてしまう私には物探しの才能も残念ながら無く、一冊を捜し出すので半日はかかる。それを知っているサンジは心を鬼にして先程から断捨離のお手伝いをしてくれてる。
床に置かれた栞を挟めた形跡も無ければ、購入以降開かれた形跡の無い本をサンジは手に取ると腕の中の本の山にポンとのせる。
「没収」
周りに散らばった本をいくつかピックアップしてサンジはどんどん私から取り上げていく。まだ読むかも、そんなに、と片付けが出来ない人間のテンプレ台詞を吐き出しながらサンジをジト目で睨みつける私。
「君を放っておいたらゴミ屋敷になっちまうよ」
「……サンジはすぐにポイポイ捨てちゃうんだから」
手伝ってもらっている自覚はある、それに自身が物を捨てられない自覚もゴミ屋敷を作る才能がある事も理解している。だが、何でもかんでも捨ててしまうサンジについムッとなり拗ねたような物言いになってしまった。
「おれはさ、この手に持てる分だけでいいの」
それにマジで大事なもんには未練がましいから、おれ、そう言ってサンジは断捨離作業の続きをする。
「マジで大事なものってなぁに?」
「君」
「は?」
「他は替えが効くけどさ、君はオンリーワンだから。この世界に一人だけの愛しいレディに捨てられたりしたら、おれはみっともなく泣くし嫌だ、嫌だって床を転げ回るかもね」
雪崩を起こしそうな本の山を床に置くと自身の潤んだ瞳を指差してサンジはこう言った。
「ほら、想像だけで涙が出てくる」
碧眼に涙が溜まり、波打つ海のように雫が揺れてはサンジの白肌を濡らす。
「だから、君はおれを未来億劫離さないでね」
「忘れたの?私が断捨離が下手な事」
「はは、周りの惨事が物語ってる」
サンジはティッシュで涙を拭うと赤くなった目尻を垂らして、私を見つめる。
「大事にするから大事にしてね」
「当たり前」
大事なガラクタの中で笑うサンジは私にとって唯一の大事な宝物だった。