短編
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現在停泊している島で出会った愛らしい存在に彼女は目を細めてしゃがみこむ、斑柄が印象的な野良猫は今日も彼女を癒やしてくれる。ふてぶてしさすら感じる面構えで自身の足下にじゃれついてくる野良猫の頭を撫でくり回せば甘えるように頭を擦り寄せてくる。
「おまえ甘えるのが上手だねぇ」
普段だったら、こうやって気分屋なブチ、この野良猫が飽きるまで少しだけ遊んでやるのがお決まりなのだが今日は少し違う。隣で何を思ったのか、野良猫の横にしゃがみこみ、にゃ〜とふざけた低音を馬鹿真面目に響かせている恋人がいるのだ。
「サンジ……」
何をしているの、と呆れた声が彼女の口から飛び出す。大きな体を精一杯小さく見えるように丸めて自身をジーッと見つめてくるサンジに彼女は溜息をこぼす。
「順番待ちだよ、レディ」
「順番待ち?」
サンジは首を傾げる彼女の空いた手を自身の頬に当てると、口を少しだけ尖らしてこう言った。
「野良猫をこねくり回すより、おれの方がいいよ」
どうやら猫に対して嫉妬しているらしい、その姿はどちらかと言えば気まぐれな猫というよりも構って、構ってと全身で訴えかけてくる大型犬のようだ。サンジは彼女の手に頬を擦り寄せたり、彼女の手を自身の頭に乗せてはチラチラとアピールするように彼女を見る。そんな姿が愛らしく見えるのはきっと恋人だからだろう。仕方ない人ね、と彼女はくすくすと肩を揺らし、サンジと向き合う。
「寂しかった?」
「それはもう死にそうな程に」
「ふふ、大袈裟なんだから」
そう言って構われたがりの大型犬の頭に自主的に手を伸ばして、そのセットされた髪をくしゃりと崩す。
「ふっ、はは、レディ、もっと優しく撫でてくれよ」
「ブチはこのぐらいがお気に入りだったわ」
「……っ、テメェ」
野良猫にキャットファイトを挑みそうな大型犬のネクタイを自身の方に引き寄せて、いい子にして、と言えばフニャフニャに緩んだ顔がこれまたフニャフニャの返事を返してくる。
「いい子にしてたら可愛がってくれる?」
「えぇ、勿論」
顎の下を指で擽って猫を可愛がるように撫でれば気持ち良さそうに瞳を閉じるサンジ、猫の真似をしてゴロゴロと喉を鳴らすサービス付きだ。
野良猫はそんな二人の横で一つ鳴き声を上げると、気まぐれに来た道を戻る。空気も読める猫なのね、と野良猫を褒める彼女に再度構ってアピールをする空気の読めない犬に彼女はくすりと笑う。手が掛かる恋人だ、と。