短編
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サンジは愛情深い人だ、恋人としての愛情、時には母のような少しだけお節介で暖かな愛情を私に向けてくる。それを嫌だと思った事は無い、貰う度に慣れない愛情の暖かさに驚いてしまうだけだ。サンジの愛情が底を尽いてしまう日はあるのだろうか、とたまに一人不安になっては何かを察知したサンジがその心に響くような言葉を置いていく。
「愛してるの意味は君がいてはじめて成り立つんだ」
突然ね、と曖昧に笑う私の頬を両手で包み込んで視線を合わせるサンジ。
「君が怖がってるように感じたから」
「何を」
「それは分かんねェけど、おれの君センサーがそう言ってる」
君を安心させてやれってね、そう言って戯けるサンジに笑えばいいのか泣きつけばいいのか分からず、下手な相槌を打ち返すだけになってしまった。
「……終わらないで欲しいな、って」
「うん」
「サンジの愛情が途切れる日って言えばいいのかな?こんなに毎日、愛を配っていたらそのうち底を尽いちゃったりしないかな、って」
私の拙い説明を茶化す事なく、サンジはうんうんと頷きながら耳を傾けてくれる。不安の種に触れたサンジは思わずといった様子で頬を緩めて、こちらに柔らかな視線を向ける。
「さっきも言ったけどさ、愛情とか愛って一人じゃ成り立たねェんだ。渡す相手がいねェと意味がねェ」
「……うん」
「おれの愛情はさ、君がおれの心にあるコップを愛で満たしてくれてるから底を尽く事なんてねェよ。愛はね、愛情を知らねェと渡せねェんだ」
おれに愛情を教えてくれてありがとう、レディ、そう言ってサンジは私の手の甲にキスを落とした。
「私こそ、」
サンジは私の唇に指を置いて、ゆるりと首を横に振る。
「私こそじゃねェ、私も、だろ?」
「ふふ、はーい」
「良いお返事」
子供扱いされているようなその言葉ですら何故かムズムズと落ち着かないのはサンジの愛情を感じるからだろうか、それとも声色が恋人特有の甘さを含んでいるからか、どちらにしても落ち着かないのには変わらない。
「愛してるよ」
「安売りしないの」
わざと顔を覗き込んでくるサンジ、そんなサンジの無駄な肉なんてまったく付いていない脇腹を摘む。
「いくら言っても伝え切れねェよ」
君は底の心配よりおれの愛に押し潰されねェか心配してた方がいいぜ、とサンジは片方の口角を上げてニヤリと笑った。
「サンジも、ね」
「君こそ、ね」
私はサンジを見上げて、サンジは私を見下ろして宣戦布告をする。内容は誰が聞いても只のバカップルだ。負けず嫌いな私達が愛を品切れにする日はきっと訪れないだろう。