短編
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好きな人の前では可愛くいたいと思う事の何がいけないんだろうか、だって男は可愛くて守ってあげたい小動物みたいな女が結局好きなんだから仕方ないじゃない。だから、弱いフリをして頭の悪い子を演じていればサンジだって好きになってくれるでしょ、と軽い気持ちではじめた演技はズルズルとやめ時を失って、サンジを失うまでやめれなかった。もう、演技なんてしてもサンジは私をお姫様扱いしてくれる事はないのに酷い顔をしたサンジに、あなたがいないと誰が私の面倒を見るの、と涙を溜めて薄っぺらい上目遣いをする私は惨めで本当の頭の悪い子だ。
「……おれは君みたいな子が一番嫌いだよ」
「もっと、早くに言ってくれれば良かったのに」
ばかサンジ、そう言って私はサンジに伸ばそうとした腕を自身の背中に隠して、ばかなんだから風邪引かないでね、と甘ったるい口調を捨てて素っ気ない可愛げのない女に戻った。
戻って来たサンジの顔は私への後悔やら何やらで断頭台を前にした罪人のようだった。二人で話すにはまだ早い、だって、私達の戦いはまだ終わっていないから。
「サンジ、嘘付いてた。私ね、スプーンよりも重いものだって持てるし一人で何だって出来る。戦闘だってサンジがいなくても問題無い、だけど、サンジと戦う時の方が私、強いよ」
そう言って無防備なサンジの体を抱き上げると、周りに散らばった敵を蹴り上げる私。
「ねぇ、私が告白してるの。クソモブは黙ってなさいよ」
隠れて吸っていた煙草の煙をぷかぷかと吐き出しながら、敵の眉間を灰皿代わりにする私はお姫様にはなれない。腕の中のサンジに視線を向ければ、はわわ、と私より可愛い顔をしてお姫様になっているから、つい笑ってしまう。
「こっちの私は好き?」
「……おれは君に取り返しのつかない嘘をついた」
「なら、おあいこね。私は二年以上の嘘よ、ウソップの鼻よりも長い嘘」
そう言ってケラケラ笑う私の首に腕を回して、ぎゅっと擦り寄ってくるサンジ。敵に囲まれているというのに私はサンジを離そうとは思わなかった。
「……おれは十年以上の嘘を恩人にも仲間にもついてきた男だよ、君の可愛らしい嘘なんかお見通しさ。君が嘘をついている間は、君の気持ちがおれに向かっている証拠だと思ってたんだ……でも、それも終わっちまったって……思って、おれが君を暴いちまったから……」
「心は嘘をつけないから、なんだっけ、人は心なんでしょ?サンジ」
だから暴かれても恋は恋のまま、そう言って私はサンジの額に口付けた。
「もう、お互いにお姫様ごっこはお終い。帰るわよ」
サンジを安全そうな場所に下ろすと私は拳を突き出す、それにサンジはニィと口角をあげて拳をぶつけてくる。ポケットから煙草を取り出すサンジは私を見つめて、次に会う時は恋人扱いさせてね、と笑う。
「ごっこじゃなくて、真剣交際」
「私の嘘も謝らなくちゃ」
「っ、くく、あれね、みんな知ってるよ」
そう言ってサンジは敵陣に向かっていく、その背中は楽しそうに揺れていて、さっきまでの沈んだ顔はどうしたのよ、と私は声を荒げて向かってきた敵を沈める。そうすれば、サンジは私の方を振り向いてウィンクを寄越す。
「素敵な王子様が迎えに来てくれたから、おれは幸せだよ。ナマエちゃん」