短編
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恋をする度に赤い糸の相手だと錯覚してしまう、もう自身の運命の相手はこの人だけだと盲目的な愛を向けて冷静に周りを見渡せるようになった頃にはスッパリと裏切られ、赤い糸の先がボヤケて見えなくなる。
「おれの恋の話なんて面白くねェよ」
「十分面白かったけど、三股されてた話とか」
「……掘り返さねェで」
三股されてたサンジくん、なんてふざけた呼び方をしてケラケラと笑っている彼女におれは苦笑を浮かべる事しか出来ない。傷心期間なんてものはとっくに過ぎて、もう一種のネタだ。
「君の話を聞かせて」
テーブルに頬杖をつき、正面に座る彼女を見つめる。彼女の心を奪えた男はきっと幸せだろう、彼女の心に一時でもいれたのだから。名も知らない男の顔を頭の中で塗り潰してしまうような心の狭い自身と真逆の野郎だったら救われないな、と思う。
「笑わない?」
「笑わねェけど。え、そんな、やべェ恋愛してたの?」
「そうじゃなくて……」
彼女は膝に置いた手をモジモジと動かす、握ったり、重ねたり、忙しく動く手。
「サンジ」
「ん?」
「だから、サンジ!」
頬を赤くし、捲し立てるように言葉を重ねる彼女。
「サンジとしか付き合った事ないのよ!」
テーブルの向こう側に座る彼女の方に腕を伸ばして、柔らかな頬を親指の腹で撫でる。
「笑わねェって約束破っていいかい?悪ィ、ニヤけちまう」
それはズリィって、そう言っておれは自身の金髪をくしゃりと乱した。そうでもしないとだらしない顔が彼女に筒抜けだからだ。
「でも、サンジには他の恋がたっくさんあったみたいだし?」
「それってやきもち?」
「……ちが、くない」
照れと気まずさが混じったような表情で彼女はプイッとそっぽを向く、それがたまらなく可愛らしくておれの顔は先程から緩みっぱなしだ。これでもか、とニヤけきった顔をぶら下げておれは椅子から立ち上がると彼女の方に回り込み、その横に腰を下ろす。
「無かった事には出来ねェけどさ、最後は君だけ」
それだけは言い切れるよ、とおれは自身の何も巻き付いてない小指を見つめ、そして、糸なんてアテにせずにその小指を彼女の華奢な小指に巻き付けた。選びたい運命を自分自身で選ぶ為に。