短編
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こんなに降るの珍しいね、と振り向いた体はサンジの腕によって閉じ込められてしまった。サンジの分厚い胸板に頭をガンガンとぶつけて不満を訴えれば、柔らかな筋肉が緩和材として私を受け止める。
「もう、いきなり何」
「可愛い子はしまえ、ってさ」
「はぁ?」
ほら、とサンジが見せてくれたスマートフォンの画面を見れば某呟きアプリが表示されている。
「ほいほい見せちゃって良いの?」
「君に隠す事なんて何もねェよ」
「ふーん、何も?」
冗談めかした言い方をしてサンジを見上げれば、サンジも冗談めかした言い方でこう返事を返した。下心はちっとばかし隠してるけどね、と。
「おばか」
「はは、ひっでェの」
サンジはタイムラインに並んだ一つの呟きをタップすると、自分が可愛いと思うものはしまえってさ、と柔らかな笑みをこぼした。サンジの指先の下には犬や猫の写真とたった今サンジが口にした言葉が文字になって書かれていた。
「吹き飛んじまったら大変だから」
「犬猫の話よね?」
「可愛いものだよ?君だって入ってる」
「ペット的な?」
ふざけて、わん、と一鳴きすれば、サンジは顔面をだらしなくさせてワシャワシャと私の髪を撫でる。その手付きは恋人同士の触れ合いというよりも、どちらかと言えばペットと飼い主の方がしっくり来る。
「可愛いけど君はペットじゃねェよ、ま、君のペットにはなりてェけど」
「そういうプレイには残念ながら興味は無いわ」
「そりゃ、残念だ」
話があちらこちらに飛ぶのはいつもの事だ、サンジと話しているとどうでもいい軽口すら楽しくて、つい、本題から離れていらない事を口にしてしまう。
サンジの腕にしまわれて、窓の外を眺める。あまり馴染みが無い雪景色に明日の事を考えてしまうのは仕方ない事だろう。明日の仕事は、明日の移動は、なんて夢の無い事を浮かべる私の背後でサンジは私の項に口付けたり、鼻をトンと押し付けたり、構っての猛アピール中だ。
「サンジ、くすぐったい」
「んー?」
聞こえないフリをして、ちょっかいを掛けてくるサンジ。可愛い子がしまわれてしまうならサンジだってその対象だろう。
「……しまっちゃうわよ」
「おれを?」
後ろを振り返り、自身の短い腕をサンジに回す。サンジの着痩せした身体は想像以上に逞しくて、しまい込むというよりも私が張り付いているように見える。
「っ、くく、籠が小せェようだ」
「サンジが大きいのよ」
「小柄な君を捕まえる為だよ」
体勢を変えたサンジは私を捕まえるように抱き締めるとカーペットの上に転がった。
「まるで赤頭巾の狼ね」
そう口にした私にサンジは、おれは善良な恋の狩人だよ、とずるい笑みをこぼすのだった。