短編
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船内での恋愛は禁止ではない、まず船長であるルフィがまともに色恋を理解しているかさえ怪しい。だが、仲間内で付き合って別れた時の気まずさを考えたら中々簡単には答えが出ない。関係が壊れても冒険は夢を叶えるまで続くのだ。
「好きだよ」
甲斐甲斐しく私の元に通うサンジは自身のセールスポイントと告白を一緒くたにして私に気持ちを渡す。何度追い払っても、何度あなたを男として見れないと突き放してもサンジはその事を覚えていないかのように振る舞っては次の日にも同じ事を繰り返す。
「……サンジと付き合うメリットを教えて」
デメリットばかりに目を向けてしまう私を惹き付けるようなメリットをサンジの口から聞きたかった。そして、関係が壊れない保証が欲しかったのだ。
「毎日、君の事を何時間と考えるよ」
「それで?」
「聞いて安心して欲しい、おれの愛がその場限りじゃないって事」
サンジは私の手に触れると、こういう触れ合いが許されちまう関係になってみねェかい、と言葉を続ける。
「……デメリットの方が多いわ」
「眠れない夜は君が夜闇に連れて行かれねェように思い付く限りの愛の言葉を君に届けるよ、それで君はこう言うんだ。うるさいサンジ、もう寝るわよ、って」
「メリットじゃないわ、ただのサンジの願望じゃない」
「おれにとっては君と付き合う事にデメリットなんてこれっぽちも感じねェからさ。おれが君より幸せになっちまう事ぐらいだよ、デメリットなんて」
君を幸せにしてェのにおれが幸せになっちまってごめんな、なんて付き合ってもいないのに心底幸せに笑うサンジ。
「……別れたら気まずいわよ」
「別れなんて来ねェもん」
何でそんな事が言い切れるの、と言いたくなる。私達が生きてるのは都合良く進むお伽噺ではない、理不尽な現実を生きているのだ。
「二人の道が別れても、おれさ、きっと君を探しちまう」
分かれ道を見つけたらさ、一緒に迷おうぜ、最善の答えはきっと別れなんかじゃねェと思うんだ、とサンジは言う。
「だからさ、同じ気持ちになってくれませんか?レディ」
何度も何十回も聞いた台詞だ。サンジは毎回、昨日のノーの返事を忘れて次の日にはこうやって同じ気持ちになってと頭を下げるのだ。その度に私はノーを叩き付けてサンジの気持ちと同時に自身の心すら無視してしまう。同じ気持ちだよ、の一言が言い出せずに立ち止まる私は迷子になるのが怖くて踏み出せずにいる子供と変わらない。
「……うざったくて笑っちゃうくらい」
「うっ……」
「同じ気持ち」
サンジのしつこさに引き摺られて出た本音はサンジのお眼鏡にどうやら適ったらしい、私を抱き上げて甲板をクルクルと回るサンジ。
「ナマエちゃん」
「ちょっと……っ!」
「愛してるよ、世界で一番」
思い付く限りの愛の言葉を探したが、口下手な私は、知ってる、そう答えるので精一杯だった。