短編
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新メニューのレシピを考えてる時のサンジの顔はルフィが赤髪を語る時と少し似ている、楽しい、嬉しい、そんな柔らかな気持ちが浮かんだ顔。それをコッソリ盗み見るのが私の楽しみでもある、私達レディの前ではあまりしない顔だからだろうか、新鮮で好きになった頃を思い出すのだ。息を潜めて、キッチンのドアを少しだけ開ける。そこから見えるサンジはノートにガリガリと何かを書き込んでは、あぁでもない、こうでもない、と自身の脳味噌に詰まった料理の知識を整理しながら、また何かを生み出すのだ。それが食卓に並んだ時のサンジのドキドキが混じった表情も好きだ、サンジの料理にハズレなんてあるわけないのに、いつもよりも慎重に皆の表情に気を配り、次々に聞こえる美味しいの声に背を向けてこう返すのだ。
「……ったりめーだろ、おれは一流コックだぜ?」
金髪の隙間から覗く耳が言葉とは裏腹に赤く染まっている事を一味の大半が知っている、その瞬間、照れ屋なコックさんの上に真っ直ぐ過ぎるくらいの美味しいという言葉の雨が降り注ぐ。その下で傘もさせずにいるサンジは困ったように笑って、いいから食っちまえ、と煙草の煙を吐き出した。
「今日も美味しかった、ごちそうさま」
皆がキッチンから出て行くのを見守り、洗い物をしているサンジの背中に腕を回した。
「君のお口にあったようで何よりだよ」
「遅くまでレシピ書いてたでしょ?」
「っ、くく、そこから見てた?」
気付いてたの、と驚く私にサンジはくすくすと肩を揺らし、盗み食いに目を光らせてねェといけねェ時間帯なんだ、と言う。
「ルフィね」
「そ、困った船長だよ」
サンジは洗い物を終えて、濡れた手を布巾で拭くと体をくるりと反転させて私の腰を抱き寄せた。
「それで君はあんな所で何してたの?」
「盗み見……?」
「君にならいくらでも見られてェけど」
「ふふ、私が見ていると集中出来ないでしょ」
「君の美貌に目を奪われちまうおれを許して」
こうやって艶を含ませて、私の耳元に顔を近付けてくるサンジの表情も好きだ。角度のせいか口元しか見えないが、きっと色っぽい目付きで私を見ているのだろう。
「レシピを書いてる時とは大違いね」
「レシピ?おれ、どんな顔してた?」
「ルフィみたいな顔」
ゲェ、と行儀悪く舌を出したサンジは、あンのアホ面と一緒かよ、と下唇を突き出した。
「少年みたいだった」
「……少年ねェ」
その顔は不満げというよりも、むず痒そうに見える。サンジの両頬に手を添えて、私の好きな顔、と言えば途端に表情は崩れてしまう。
「ふふ、崩れちゃった」
「待って、戻すから」
頬に添えた私の手ごと粘土のように自身の頬をこねくり回すサンジ。格好いい顔、少年のような顔、可愛い顔、コミカルな顔、どれを見てもこの人が好きだと思える。
「どう?戻った?」
「戻ってない」
ニヤけ面ー、と茶化す私にサンジは顔をくしゃりと歪めた。
「どういう顔なの」
「君が可愛くて仕方ねェって顔」
「なら、今の私とお揃いね」
私の一挙一動で百面相を見せるサンジが可愛くて仕方ない顔、そう口にした今の私の顔はレシピを書くサンジにも赤髪について語るルフィにも負けないくらいに良い笑顔を作るのだった。