短編
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ピリッとした痛みが内腿に走った、自身の長い爪がストッキングを履く際に擦ったようだ。ミミズ腫れのようになってしまった赤い線の上を指でなぞる、痛みはあるが手当てをする程ではない。
「……爪、少し短くしようかしら」
自身の肌を傷付ける事は別に構わないが同じようにサンジの背中を傷付けてしまうかもしれないからだ、サンジは男の勲章だと愛おしげに鏡の前で背中の傷に触れていたりするが見ているだけで痛そうだ。なら、爪を立てるなと言われてしまいそうだが最中はそんなこと気にしていられない。普段はヘタレで初心なクセに最中のサンジは少しだけ強引だ、狙っているわけではなく天然でやっているから末恐ろしい。
どうしたの、と私を上から覗き込むようにしてサンジは私の爪に触れた。色付いた爪をするりと撫でて、そのまま手をぎゅっと握るサンジに私はタイトスカートから伸びた自身の脚を指差す。中々、際どい場所に出来ているせいか、サンジはボンッと発火したように顔を赤くして見当違いな事を口にする。
「ま、まだ昼間だよ!?まだ早ェって!!」
赤い顔を指の隙間から覗かせて何度もチラチラと私の太腿と顔を往復する騒がしい視線につい笑ってしまう、言葉なんて無くても感情が浮き彫りになったその表情が全てを物語っている。
「ふふ、違くてここよ。怪我したの」
「怪我!?」
怪我なんて大袈裟な言い方をしてしまったせいか、サンジは瞬時に顔色を変えて私の両肩に手を置いた。
「爪で引っ掻いちゃったの、ただの不注意よ」
「君の白肌に傷が……」
手当てしねェと、そう言ってサンジは部屋から出て行き、救急箱を取りに行く。大袈裟よ、と笑う私はベッドに座り込みサンジを待つ。
消毒液を含ませた脱脂綿をピンセットで挟み、サンジは精神統一をするように息を吐く。出来るだけ太腿から視線を逸らして、脱脂綿をポンポンと私の太腿に滑らせるサンジ。その童貞のような反応が面白くて私はサンジの手からピンセットを抜き取り、その大きな料理人の手を自身の太腿で挟んだ。
「なッ……!ナマエちゃん!?」
「えい♡」
「か、可愛い……」
太腿に挟まれた手は指一本たりとも触れてはいけないと思っているのか微動だにせず、石のように固まっている。
「ナマエちゃんの柔らけェお御足が、お、おれの手を……っ、このままでいてェがナマエちゃんの傷も心配だ……おれはどうしたら……クソッ……」
「このまま挟んだまま、ね?」
サンジの耳に顔を近付けて、少しだけえっちな言い方をすればサンジの肩は大袈裟に跳ね上がり、ゴクリと喉まで鳴らしている。こんなに初心で大丈夫だろうか、と心配になる気持ちとこのままのサンジでいて欲しい気持ちが私の中で殴り合う。
「……ナマエちゃん」
意地の悪ィ顔してる、そう言ってサンジは背中を丸めて私をチラリと見る。そういう態度と顔が私をそういう顔にしてるのよ、とは口には出さずにそのハの字に垂れ下がった眉を指で撫でる。
「可愛い子」
「君の方が可愛いよ?」
可愛い子には旅をさせよ、と言うがこんな可愛らしいサンジを旅に出させたら大変だ。今だって海賊として冒険はしているが一人にしたら、きっと私みたいな悪い海賊女に捕まってしまうだろう。
「私にこうやって捕まってなきゃ駄目ね」
「ん?」
なぁんでも、とサンジのシャツの襟に指を引っ掛けて、そこから見える白肌に爪を引く。赤く引かれたその線が可愛いサンジを護ってくれますように、と太腿に付いた傷と同じような傷をサンジの白肌に残すのだった。