短編
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雨女の私と晴れ男のサンジ、デートをすれば半分の確率で雨に降られる。予報なんて意味の無い程の気まぐれな空にナミは肩を竦めて、バカップルに振り回される天気も災難ね、と呆れたように笑った。
「傘はちゃんと忘れずに持って行くのよ」
「ふふ、ナミお母さんみたい」
「こんな大きな子ども知らないわ」
そう言って、ナミは言葉とは裏腹に随分と優しい手付きで私の頭を撫でる。そして、早く帰って来なさいよ、とまた母親のような事を口にするのだ。
ナミに言われた通りに折り畳み傘をバッグに入れ、サンジと島に下りる。サンジの小指に自身の小指を繋ぐ、そうすれば、サンジは驚いたように私の方を振り向き、ニイっと歯を出して嬉しそうに笑った。そして、繋いでいた小指をするりと解くと手の平いっぱいで私の手をぎゅっと包む。
「恋人繋ぎ〜♡」
手なんて数え切れないぐらいに繋いでいるのに毎回、サンジはこうやって飽きもせずに世界に私達を見せびらかすように幸せオーラを振り撒く。
幸せオーラを振り撒く私達が気に入らなかったのか、太陽は雨雲に覆われ、サンジの一張羅のジャケットに雨粒を落とした。
「ナマエちゃんの勝ちだね」
「雨女だからって嬉しくないわよ」
サンジは雨が降っても私のせいにはしない。恵みの雨に愛された君は濡れていても素敵だなァ、と目を細めるサンジの頭上に折り畳み傘を差し出せば、おれが持つよ、と傘を奪われてしまう。
「サンジも、ちゃんと入って」
サンジの腕に自身の腕を絡めると、体を密着させて定員オーバーの傘の中で雨をしのぐ。だが、雨の強さが増せば増すほど傘は私の方に傾けられる。
「風邪引いても知らないわよ」
「えへ〜〜〜♡心配してくれてるの?♡」
嬉しいなァ、と狭い傘の中で器用にくねくねと体をくねらせるサンジ。
「相合傘って濡れてる方が惚れているらしいわよ」
傘からはみ出たサンジの右肩を見ながら、私がそう口にすればサンジは納得いかないと口を尖らす。
「君からの愛を疑うみてェでおれは好きじゃねェなァ、それ」
片手をポケットに突っ込みながら、サンジは自信ありげに笑うと、だって、おれ、すげェ愛されてるもん、と口にする。
「すごい自信ね」
「ありゃ、違った?君に愛されて世界一幸せな自覚があるんだけどなァ」
鼻歌まじりで、まるでステップを踏むように水溜りを避けるサンジは言葉通り世界一幸せに見える。
「だって、ナマエちゃん言ってただろ?」
「ん?」
「楽しみにしてる時は大体、雨だって」
だから、おれとのデートで雨って事はさ、そこまで言ってサンジはふにゃりと目尻を下げて私を見た。
「晴れの日だってあるじゃない」
「それはおれの楽しみが強すぎた日」
「ふふ、また勝ち負け?」
今の所、おれ達の愛は引き分け、と笑うサンジの腕にぎゅっと抱き着いたまま、私はツンと澄ましたような表情を作る。
「次はきっと、また雨よ」
サンジの幸せオーラに当てられた空が怒りだすか、それとも私の楽しいが通じてしまうのか、どちらにしても結果は雨だろう。
「……バカップルに振り回されて可哀想ね」
私は、そう囁くと傘から飛び出す。サンジの驚いた声をBGMに私はサニーまでの道を走る。
「ねぇ、サンジ!一緒にお母さんに怒られて!」
「へ?お母さん……?」
何も分かっていないサンジの手を引っ張り、私は走り出す、優秀な航海士に次の天気予想を聞く為に。