短編
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あと少しでカウントダウンと言うタイミングでテレビ画面がスタジオから外に切り替わった、そこには浮かれた大学生などが映り、まさに大晦日という光景だ。それをボーッと眺めていたサンジは呆れたような顔で、こいつら年越しと同時にジャンプして地球にいなかったとか言うタイプだぜ、と偏見に塗れたコメントをする。
「ふふ、偏見よ」
「……おれがそうだったから間違いねェ」
大学生のテンションって怖ェよな、と自身の黒歴史に溜息を吐くサンジは彼女の背中にピッタリと体を密着させて彼女の華奢な肩に顎を置いている。
「サンジくんでもそんな可愛らしい時があったのね」
「……今も可愛らしくない?」
その顔は可愛いかもね、そう言って彼女は首筋をなぞるサンジの金髪に手を伸ばすが、傷んでいない金髪は指からするりと離れ、元の位置にストンと戻る。
「今回もジャンプしとく?」
「しません!」
彼女の軽口に食い気味で否定を返すとサンジは彼女の体をぎゅっと抱き締める。
「年越しも君はおれの腕の中にいるの」
「……いつも通りじゃない?」
「いつも通りの幸せが一番じゃない?」
「本音は?」
君とイチャイチャしたい、そう言ってサンジはテレビ画面に映る学生達がカウントダウンを始めるのと同時に彼女の唇に噛み付いた。
「ん、っ、甘ェ年明けだ」
「……今年もサンジくんに勝てないじゃない」
「はは、おれは若いレディに負けっぱなしだよ」
きっと、今年もね、とサンジは目尻の皺を深めて微笑んだ。年齢は確かに少しばかり離れているが、年寄りというよりか大人の色気でこちらが食い殺されてしまうような危険さがあると彼女は思っている。その余裕な表情を引っぺがしてやりたい、と思いながらもそれは叶いそうにない。
「……もう、サンジくんとのキスで天国にいたって言おうかしら」
「極上だった?」
彼女の唇を指でなぞって、サンジは分かりきった事を聞く。彼女にキスを教えたのも、彼女にキスは気持ちいい事だと仕込んだのも全てサンジだ。なのに、知らない顔をして彼女の顔が赤らむのもジッと待ち、熟れた頃に熱を持った唇で襲い掛かるのだ。
「最高だったよ」
だが、今日の彼女は一味違う。唇をなぞる少しだけカサついた指をぺろりと舐めて、キスをするように指の先端にちゅっ、ちゅっと何度も唇を押し当てる。
「っ、くく、くすぐってェ」
「サンジくんの真似」
「おれ?」
油断させておいてこうやって噛み付くの、そう言って彼女はサンジのシャツを掴み、男にしては厚みのあるサンジの唇に遠慮なく噛み付いた。年越しは天国に行っていた、と後日、サンジが言い触らすまであと数日、束の間の勝ちを彼女は堪能するのだった。