短編
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サニー号に炬燵が実装した、フランキーが全員で入れるようにと作ってくれたそれはよく見る正方形ではなく長方形のテーブルに炬燵布団が掛けられている。炬燵は冬の魔物だ、一度中に足を突っ込んでしまえば、その足先からポカポカと熱が包み、炬燵から出る意思をじわじわと奪っていく。
「ナマエちゃん、寝るなら女部屋」
「んっ……、もうちょい」
先程から同じようなやり取りを繰り返している二人に周りのクルーはまたかと慣れたような顔をして各々、自身の作業に集中する。その、またか、の正体は彼女の寝落ちでもサンジの母親のような言葉に対してでもない。二人の位置についてだ。
長方形の炬燵は横に数人、前に数人の向かい合わせになるように作られている。フランキーのメカめいた体の横には小柄なチョッパーが座り、互いに配慮する並びが最近は定着してきたが初めからこの二人はどこかおかしかった。クルー公認の恋人同士である二人が向かい合わせに座るのも隣同士に座るのも皆、予想が出来ていた。
「サンジ、ナマエの横座れよ」
ウソップが気を利かせて彼女の横から立ち上がろうとすれば、サンジはウソップの肩をトンと叩き、気にすんな、座ってろ、とウソップに声を掛けた。
「いいのかよ、ナマエの横だぜ?」
「おれの定位置はこっち」
そう言ってサンジはポカポカと蕩けた様子で炬燵テーブルに頭を預けた彼女の背後に座り、その長い脚で彼女を挟んで炬燵布団の中に入った。
「サンジくんだぁ」
「はは、ナマエちゃんもうおねむかい?」
「んー、もうちょいここにいる」
そっかァ、と甘い相槌を打ったサンジは彼女の肩に顎を乗せたまま正面に座るナミに向かって食費の話題を振る。
「次の島でさ」
周りの反応に気付いていないのは当事者二人と船を漕ぐ剣士だけだ。ルフィですらサンジの言う定位置に不思議そうな顔をして、あいつら何であんな団子になってんだ、と首を傾げている。初回がそれだったせいか、今では二人が離れて座っていると喧嘩でもしたのかと勘繰ってしまいそうになるクルー達。
「サンジ、お膝貸して」
「どーぞ、レディ」
二人は周りの反応なんてお構いなしに互いの座椅子と肩置きになっている。サンジの腕が彼女の薄い腹を囲って二人の距離が無くなり、元々二人で一つの生き物だったかのように当たり前にそこに存在している。
「冬の魔物はあいつらかも」
距離一つでクルーの心を掻き乱す二人を見つめながらナミは苦笑いを浮かべた。違いねぇ、と相槌を打ったウソップも同じような表情で麦わらの名物カップルに優しい眼差しを向けるのだった。