短編
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「二十歳前半なんて大事な時期でしょ、私なんかで無駄にしちゃ駄目だよ。勿体無い」
反論する事すら出来ずにサンジは彼女の言葉に思わず真顔になる、彼女はサンジの気持ちを勝手に暴き、挙げ句の果てには無駄だから捨てるように促した。サンジは思わず、彼女の肩を乱暴に掴むと彼女の華奢な体を壁に押し付けた。
「なァ、おれの気持ちは無駄か」
「……時間は有限よ」
「答えになってねェ」
これじゃ、まるで拗ねた子供だ。年上の彼女からしたらこういう所が受け付けないのだろうか、ならハッキリとそう言ってくれればいいのに、とサンジは思う。それに伝えるつもりなんて無かった。ちゃんと仲間として時々メロリンに恋心を乗せて、淡い片思いをゆっくりと終わらすつもりだったのに彼女はそれすら許してくれないようだ。
「サンジならナミなんてどう?」
これ以上、余計な事を言わないでくれ、そう思った途端に火に油が注がれる。サンジは舌打ちを溢すと彼女の横の壁を蹴る、壁とサンジの凶悪な面に挟まれた彼女は肩をビクッと揺らし、視線を下に落とす。
「他の女なんて考えてる暇ねェんだよ、こっちは」
あんたに必死に恋して、必死に隠し通そうとしてんだよ、とサンジは声を荒げて自身の恋心を吐露する。
「どうせ、年齢を持ち出して断る気なんだろ?ハッ、お優しいナマエちゃんらしくて結構だよ」
彼女の優しさを否定するサンジの言葉は彼女を傷付けながら、口に出したサンジ自身にも傷を負わせる。レディを傷付ける事なんてしたくない、それにその顔を曇らせたいわけじゃなかった。
だって、と言い淀む彼女の視線は中々一点に定まらず、ウロウロと視線を移動させている。自身の両手を掴んでは離して、緊張から汗ばんだ手を何度も組み替える彼女。
「……私ね、悲しくて、きっと泣くわよ」
君が私以外のものになったら、そう言って自嘲する彼女、彼女もまた自分自身の発言に傷付いていた。
「……都合がよろしいことで」
「大人は都合がいいのよ」
「なら、おれはどうしたらいい?諦めろって?それとも実らない恋を抱えながら誰とも付き合うなって?」
サンジは壁に押し付けていた右脚を下ろしてその場にしゃがみこむ。自身の金髪をガシガシと掻きながら、彼女からの言葉を待つ。どんな言葉が来ても傷付くのだ、簡単に諦められるような単純な感情なら今の時点で既に冷めている。後者だったら彼女への恋が喉元までせり上がり、サンジの呼吸を止めてしまうかもしれない。
「……大事な時期を奪ってごめんなさい、君を好きになってごめんなさい。ナミにもロビンにも君をあげたくない、君の愛が欲しい……っ、でも、私なんかでいいのか分からないのよ」
「ちょっと先に産まれたからっておれの愛から逃げられると思うなよ、おれは先を急ごうとするあんたの背中を追い掛けるのが好きなんだ。君だけを視界に入れて、愛を叫ぶから」
君は振り向いてくれるだけでいい、そう言って重なった視線。年齢差という枷に繋がれていた二人はもう既に自由を手に入れていた。