短編
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酒は楽しく飲むもんだ、と話すサンジは元々お酒に強くない。ゾロのように瓶ごと抱えて飲む事もせずに、ちびちびちと酒を口に運んでは、また立ち上がり、給仕役としてクルーとクルーの間を忙しなく動き回り、ツマミに酒、それらが無くなる度に追加していくサンジ。そんなサンジが油断して羽目を外す日がある、それは私と二人っきりで飲み会を開いた時だ。サンジ自身が羽目を外すというよりも、私が酔ったサンジを可愛がりたくて、つい、飲ませ過ぎてしまうのだ。その度にサンジは私にベロベロにされ、起きた時には記憶を飛ばしてしまっている。反省しているのか、と聞かれれば、サンジが二日酔いするタチじゃなくて良かった、と思うくらいには懲りていない。
「ナマエちゃん、これスゲェよ!すしなのに甘ェ!」
酔って、へにゃへにゃになってしまったサンジは自身の手先の器用さを武器に知育菓子の大群を作ってはテーブルの上に並べている。何の為に買ったの、だとか思う所は沢山あるがサンジの料理に対する知的好奇心は私にも他のレディにも止められない。
「ふふ、可愛い子ね」
目の前の金髪をくしゃりと撫でれば、サンジは不思議そうな顔で首を傾げる。
「かわいいのはナマエちゃんでしょ?」
常識でしょ、とでも言いたげなサンジの顔にくすっと笑みを浮かべて私はサンジに質問を投げ掛ける。
「たとえば、どこ?」
サンジは自身の顔の前に人差し指を立てると、みんなには秘密にしてね、と片目を器用に閉じる。やけに色っぽいその表情に魅せられながら、私は短く了承を伝えた。
「ふふん、では、ナマエちゃんのかわいいところを発表します」
サンジは片手に持ったままのグラスを頭上に掲げて、口ではドラムロールを奏でる始末だ。あぁ、なんて可愛い子、とニヤけそうになる口元を袖で隠しながら、私はサンジの言葉に耳を傾けた。だが、可愛いのオンパレードに一瞬にして私の体はメデューサに見られたかのように固まる。そんな癖あったかしら、そんな事を口にしたっけ、と自身の記憶よりも鮮明なサンジの口から話される私という生き物。
もう、勘弁してくれ、と降参の合図にテーブルに突っ伏して、明日には忘れちゃうくせに、と負け惜しみのような事を口にした。
「忘れたら嫌かい?」
「……さぁ、どうだろう」
「君が悲しむぐらいならネタばらしさせてよ」
ネタばらしってなに、と顔を上げた私にサンジはスマートに笑って、こう言った。
「そこまで弱くねェの、おれ」
サンジはグラスを一気に呷ると私に余裕の笑みを向けて、次は素面の時に二人っきりになりてェなぁ、と甘えるようにテーブルの下で長い足を絡めてくる、それを蹴り飛ばす理由は私には無かった。