第一章 出会い
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鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
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お饅頭を食べながら、縁側に座って色々な事を話した。
私の家族はおじいちゃんとたか兄で、いのすけくんは猪や他の動物達と過ごしていること。
お互い本当の両親の話はしなかった。
私は意図してしなかったのだが、いのすけくんには「生みの親」という概念がなかったのだろう。
他には、好きな食べ物、好きな事など他愛もない話だったが、お互いがお互いにとって新鮮な話題だった。
時折、言葉の意味を教えながら、楽しい時間は過ぎていった。
1時間くらい経っただろうか。
おじいちゃんとたか兄が帰ってきた。
「おかえり!」
私が縁側に座りながらそう声をかけると、隣にいのすけくんが座っている光景に2人とも目を丸くした。
「お前っ、また来たのか!小波に意地の悪ぃ事してねぇだろうな!!」
たか兄はそう言ってズカズカと私達の方へ来た。
「私が一人でいたから、いのすけくんは一緒にいてくれたんだよ!色んな話をしたよ!いのすけくんはツヤツヤのドングリが好きなんだって!」
どうにか、たか兄にいのすけくんが追い出されないよう、幼いながらも必死に言いくるめようとした。
でも、お饅頭を分けっこした形跡のある、空っぽの皿を見ても、たか兄が私達を咎めないという事は、やはり2人はエスパーだったのだと気付き、2人の優しさに胸がホカホカした。
「そうかいそうかい。ツヤツヤのドングリかい。見てみたいのぉ。」
おじいちゃんは、いのすけくんを私と同じように、本当の孫のように接してくれる。
そうだ、お願いしたい事があったのだ。
「おじいちゃん、いのすけくんと山にドングリや花を探しに行ってもいい?ツヤツヤのドングリを見つけたら、2人にもあげるからさ!お願いします…!」
私は慣れないお願いをした。
お願いをする時は、しっかり相手の目を見るのが礼儀なのかもしれないが、私にはその余裕はなかった。
近くの床を見たり、ぎゅっと合わせた自分の両手を見たり、私の視線は落ち着かなかった。
それでも、最後はしっかり目を見て、お願いする事ができた。
普通の子供だったら、悪いとも申し訳ないとも思わず、自分の両親にわがままを言うのだろうか。
だとしたら尊敬する。
私ときたら、物を買ってもらう訳でも、どこかへ連れて行ってもらう訳ないのに、心臓がドクドクしていた。
「あいわかった。気をつけて、必ず明るいうちに帰ってくるんじゃぞ。」
「おい猪!小波に何かあったらタダじゃ置かねぇからな!!!」
しかし、私の心配など不要だった。
2人とも、私がいのすけくんと山に行くのをこんなにもあっさりと許してくれた。
そして、私の事を心配してくれる2人の言葉からは、いのすけくんへの信頼も感じられ、それも嬉しかった。
「ゆうこは俺に任せろ!」
いのすけくんは、私の名前を呼び、頼もしい言葉を言い放って腰に手をやった。
名前を呼ばれたことや、その後に続いた言葉に少し恥ずかしくなった私は、外に出るための履物を取りに行った。
おじいちゃんとたか兄の間を通り抜ける時、おじいちゃんは少し屈んで私に言った。
「小波にも、友達ができたんじゃのぉ。良かった良かった…。」
その言葉がどんなに嬉しく、私の心を温めたか。
「友達」
私にとって初めての存在だ。
私の世界が、遠く見渡せるほどに広がるのを感じた。
私は履物を履いて、友達のいのすけくんの所へ駆けていった。
─小波が、あんなに必死にお願いしてくるの、初めてだな、じいちゃん。
─伊之助に出会って、小波は少し明るくなったかの。ああやって、色んな人と出会えるといいのぉ。
その日私達は、ツヤツヤのドングリはもちろん、様々な花や木の実を抱えて、おじいちゃんとたか兄に自慢するのであった。
「いのすけくん、すごいね!山のこと、本当に何でも知ってるんだね!」
「俺は山の王だからな!
俺の事はおやぶんと呼べ!」
「うん分かった!いのすけくん、また連れて行ってね!」
─いや、呼ばないんかーい。(byたかはる)
そうして、私達は、しばしば一緒に山に遊びに行ったり、おやつを一緒に食べたりするようになったのだった。
そして月日は流れる。