第六章 機能回復訓練
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鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
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私は悶々とした気持ちでその後の訓練を行っていた。
伊之助はカナヲさんを捕まえられなくてフガフガ腹を立てているし、善逸はもう諦めの境地に突入しそうだ。
だけど炭治郎は何度も反射訓練に挑んでいる。
私は許可なく猪頭を外そうとした事を直接伊之助に謝りたい。
いつもは平気だったという事実に私は甘えていた。
謝罪するタイミングをうかがっているのだが、私達の場所は離れてしまっているし、私は自由に動けないのでもどかしい。
「はぁ……」
私はため息をつきながら訓練のメニューをこなしていた。
「うがぁぁ!!!ちょっと勝負してくる!!」
「ちょっと伊之助!?誰と!?どこ行くのさ!!」
伊之助の雄叫び?と、善逸の焦ったような声が聞こえてきたのでそちらに目をやると、ドタドタと伊之助がこちらに駆け寄って来た。
怒られるのかと思い、一瞬怯んでしまった。
「小波!!」
「はいぃ!!」
私は体をビシッと正して返事をする。
右手に持っていた重しを落としそうになった。
伊之助は座っている私の目の前で腕を組んで私を見下ろす。
「さっきは悪かったな!!」
「えっ!いや!!私こそごめ…「俺と勝負しろ!!」
突然戦いを挑まれ、私は何が何だか分からない。
謝ったことになったのだろうか。
伊之助は素直に謝罪の言葉が言えるのだから、私も見習わなくては。
というか悪いのは私なのに、伊之助から謝罪するとは思ってなくて何だか申し訳ない気持ちだ。
だからその勝負とやらを断るなんてことは出来ないのだけれど…
「勝負って…私、動けないよ?」
松葉杖がないと歩けない私とどんな勝負が出来るのだろうか。
すると伊之助は、先程の湯呑みの訓練を行っていた机を挟んで、私の向かい側の椅子にドカッと腰を下ろした。
そして肘をついて私に右手を差し出してきた。
「…腕相撲?」
何度かやった事はある。たか兄や、小学校の級友と一時期遊びでやっていた。
伊之助もこの遊びを知っていた事が意外だ。
炭治郎達とやった事があるのか、それとも人がやっているのを見た事があるのか…
山の動物達とは…やらないよなぁ…
伊之助の勢いと勝負の内容のギャップに私は戸惑いつつ、伊之助と同じ体制になってその右手を掴んだ。
伊之助の手は私のより大きく厚く、ずっしりしていた。
勝てる筈がない。
手首や腕の太さだって全然違う。
私の何を見て腕相撲を提案してきたのか。
「この手とか腕の差…私が伊之助に勝てる筈ないと思うんだけど…」
「あぁ!?んなのやってみねぇと分かんねーだろ!」
「えぇ!?ちょっと伊之助!
小波の腕折れちゃうだろ!!」
善逸は慌てて止めに入ってきた。
炭治郎も、なんだなんだ、と寄ってきた。
「ほんとだよ!悔しいけど、私なんか炭治郎や善逸にも勝てないよ!」
「だーからぁ!
勝負しねーと分かんねぇんだよ!」
伊之助は早くしろと言わんばかりに私の手を揺すってきた。
それだけで圧倒的な力の差を感じたが、勝負をして伊之助が満足するならいいかと思い、私は炭治郎に合図をお願いした。
結果はほぼ瞬殺だった。
開始の合図の後、ほんの一瞬私が先に力を入れたので、拳一個分ほど押すことができたが、それは儚く押し返されてしまった。
伊之助のお情けで、机に叩きつけられはしなかった。
机の面に私の手がつくかつかないかというところで、伊之助は力を弱めてコツンと私を負かした。
やっぱり伊之助は優しいと思った。
「ん…参りました…。」
私が両手を挙げて降参、という風にすると、伊之助はプシューと鼻息を荒らげて椅子から立ち、仁王立ちした。
「分かったぜ!!
小波は速い!俺は強い!!」
よって俺の方が強い!といいながら、ガハ八と笑う伊之助を、私と善逸と炭治郎は目を点にして見つめていた。
なるほど、伊之助なりに考えて勝負を挑んできたのね…
私がカナヲさんに勝てた勝因を探っていたのか。
しかし、残念ながら、それでもカナヲさんを捕まえられない伊之助の心は徐々に折れていき、善逸は諦めていった。
誰よりも強くなりたい伊之助は、きっとすぐに復活するだろう。
私は頑張っている炭治郎の応援をしつつ、自身の完治を心待ちにしていた。