第六章 機能回復訓練
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鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
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私は数日間着続けていたパジャマを別のものに着替えながら、あの戦いで意識を手放す直前の事を思い返していた。
(あの意識のフェードダウンは完全に死ぬやつだよなぁ……)
伊之助がいかに自分を心配していた事か、痛感した。
「伊之助さん、本当に付きっきりで朝から晩まで、小波さんの傍に居たんですよ。」
アオイさんが私の布団や枕のシーツを交換しながらそう教えてくれた。
「そんなに…?」
「小波が食えない分も食う!とか言って、ご飯は沢山食べてましたけどね。」
と苦笑いで付け足した。
その姿を想像して、私も笑ってしまう。
私が目覚められたのは、伊之助が私の分まで沢山食べて、エネルギーを補ってくれたからなのか。
「そうそう。ずーっと小波さんの傍に居て、手を握っていたんです!
…えっと、小波さんと伊之助さんはそういうご関係なのですか?」
なほちゃんは、私よりもだいぶ年下に見えるのに、点滴の様子を見たり、私の左足の具合を確認したりと、しっかり働く姿に感心してしまう。
彼女は、久しぶりの食事である回復食をベッドのテーブルに丁寧に並べながら、たどたどしく尋ねてきた。
それを伊之助に問う勇気はなかったようだ。
尋ねたとしても、質問を理解してもらえるか怪しかったからだ。
「…へ?そういう関係…?」
私は、自分に寄り添ってくれている伊之助の姿を想像し、ホッコリしていた。
だから突然のなほちゃんの質問を、すぐには理解できなかった。
「えっと…お付き合いされてるんですか?
だ…男女の仲といいますか…」
なほはそこまで言って、ひゃあ、と顔を覆った。
アオイさんもテキパキ仕事をこなしながら、興味を示してくる。
伊之助の顔と、"男女"という何だか生々しい響きが重なった衝撃に私は体を竦め、慌てて答えた。
つい、なほちゃんの恥ずかしさがうつってしまいそうになり、私は必要以上に首を降る。
「いやいやいやいや!
いやそういうのじゃなくて…
…
いや、そんな…!あの…んー、しっくりくる表現が思いつかないな…
友達以上だけど、兄弟ではない…て感じ?ははは…」
私がいたたまれなくなって首を傾げると、同様にアオイさんとなほちゃんも首を傾げた。
兄弟ではないにしても、どちらが兄もしくは姉なのか…歳で考えたら私が姉だろうか…
でも何かと私を引っ張る伊之助が兄だろうか…
そんな事を考えている私を、二人は怪訝そうな顔で見てくるので、はっと我に帰った。
「ほら、人と人との繋がりってさ、多種多様でしょ? 」
そう上手く言いくるめようと多少無理やりな結論を出す。
アオイさんもなほちゃんも、はぁ、と気の乗らない返事をして、仕事を続けた。
あ…これは納得いってないな…
私は体の体温が上がるのを感じつつ、いただきます、と小さく言って食事に手を付ける。
改めて、伊之助との関係を考えてみた。
仲間…?
炭治郎や善逸、禰豆子ちゃんも仲間だけど、伊之助とはそれ以上の関わりだと思っている。
私だけかもしれないけれど…
じゃあ友達…?
子どもの頃はそう思っていた。
でも伊之助は突然私の前から居なくなってしまったから…
これもやはり私が一方的にそう思っていただけなのかもしれない…
家族も兄弟も、しっくりこない感じだ。
私が伊之助へ抱く思いは非常にふわふわと曖昧で、どんな関係かと聞かれたら困惑するのも仕方ないかと、妙に納得した。
伊之助の私に対する思いは、尚更言語化するのは難しそうだと思う。
だからそれを人に説明する事なんて不可能に決まっている。
うんうん、何でもいいじゃないか。
私は自分に寄り添い続けたという伊之助の姿を頭の片隅に置いやった。
そうしないと、納得いった自分の気持ちが乱れると思ったからだ。
なんだか、いつもの騒がしい伊之助に猛烈に会いたいと思った。