第六章 機能回復訓練
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鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
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長い長い夢を見ていた。
私の周りで沢山の人が苦しんでいて、私はその人達を助けていく。
何故、何によってその人達が苦しんでいるのかは分からない。
助けられた人は私にお礼を言って私の前から立ち去って見えなくなる。
段々と自分自身の体は苦しくなっていく。
しかし目の前に苦しむ人がいる限り、私は救いの手を差し伸べ続ける。
私の体力は、徐々に限界を迎えようとしていた。
苦しい…
きつい…
夢だと分かっても尚、目覚める事ができなかった。
息も切れ切れで立ち上がる事が出来なくなった私の前に、一人の男が立ち止まる。
その人は私に手を差し出した。
私は最後の力を振り絞ってその手を掴んだ…
「…!?」
伊之助は、小波の脈拍の変化に気付き、浅い微睡みから目覚めた。
「小波っ!?」
小波が自分の手を握り返すのを感じ、伊之助はさらにその上に手を重ねた。
「早く目ぇ開けろよ…!」
泣き出しそうな顔で声を絞り出しながら、祈るように小波の手を強く握り、グリム童話の姫のように眠って固く閉じられた瞼を見つめる。
小波の手の力が強くなる。
表情筋に動きが見える。
「小波!おい!」
小波の長い睫毛がゆっくり動く。
艶のある漆のような瞳が覗いた。
その瞳を動かさずとも、伊之助の姿を捉えることができた。
「…伊之助。」
久しぶりの呼吸であるかのように、ゆっくり、慎重に、息を吸って肺に酸素を行き渡らせ、気管を通って外に出す。
小さく息を吸って、小波は伊之助の名を呼んだ。
「ぅおおおお!!!!
小波が起きたぁ!!!」
今にも泣きそうな様子から一変。
興奮気味に小波の手をぶんぶん振り、そして飛び上がった。
その声は屋敷中に響き渡る。
小波はしばらく、自分の姿を確認したり部屋を見渡したり…状況を客観視していた。
「てめぇ!!どんだけ寝るつもりだよ!!
全然起きやしねぇ!!
もう一生分寝たんじゃねぇの!?」
伊之助は小波の周りを飛んだり跳ねたりしながら小波に怒鳴りつけるが、その声には嬉しさと安堵しか含まれていなかった。
「…ふふ、寝過ぎちゃったね。」
小波もそれを感じ取り、微笑みながら眉を下げて、申し訳ない気持ちを表した。
すると、騒ぎを聞きつけた炭治郎、善逸がドタドタとこれまた騒がしく小波の病室の扉を開けた。
「小波!意識が戻ったんだな!
あぁ… 良かった…」
「うぉぉぉん!!!小波ー!
もう!いつまで寝てるのさぁぁ!
本当に心配したんだからねぇ〜!!」
善逸は小波の頭を自らの胸元にグリグリ押し付けて号泣し、炭治郎も小波の布団に縋り着いて涙を流した。
「二人とも…心配してくれてありがとうね。」
小波は自分の回復にこれ程までも喜んでくれる存在がいる事にこそばゆい思いをもちながらも、改めて自分が長い眠りから目覚めたのだと実感した。
三人の優しさに触れ、小波は温かい気持ちに満たされる。
「おめぇら何で泣いてんだよ!気持ちわりぃな!」
「ゔゔぅ……嬉し涙だよ…!分かんないのかよ!」
伊之助には、嬉しい事にも関わらずボロボロ泣く二人の心情が理解出来なかった。
「伊之助も…心配してくれてありがとう。」
「おう!子分の世話すんのは親分の役目だからな!!」
しかし小波が感謝を伝えると、得意気に胸を叩いて仁王立ちして答えた。
小波も、今回ばかりは本当に伊之助に心配をかけてしまったなと思う。
その後は、点滴を交換したり回復食を摂ったり薬の説明を受けたりと…目覚めてからやる事は沢山あった。
しばらくの間、伊之助達には部屋を出てもらい、小波はアオイや、看護師であるなほ、きよ、すみ達の世話を受ける事になった。