第六章 機能回復訓練
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鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
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小波が気を失った後、小波と伊之助は"隠"という事後処理部隊によって、"蝶屋敷"という、"蟲柱"胡蝶しのぶの管轄する療養施設に運び込まれた。
それと同時に善逸も同じ場所に運ばれ、治療された。
善逸は毒に侵されており、手足が短くなっていた。
善逸は那田蜘蛛山の前で後込んでいたのだが、炭治郎達に置いていかれ、少し経ってから禰豆子も山へ入ってしまった事に気付き、炭治郎達…というか禰豆子を追って入山した。
一人彷徨っていると、蜘蛛の姿の鬼と遭遇し、善逸は例の如く気絶しつつも鬼を討った。
その鬼の毒により命の危機に晒されたが、蟲柱の解毒によって一命を取り留めたのだった。
「伊之助ぇぇ!無事だったんだね!!
見てよ俺!!蜘蛛になる所だったんだよぉぉ!!」
「……」
「ねぇ!禰豆子ちゃんや小波や炭治郎はどこぉぉぉ!?」
「……小波…」
ほとんど同時に運ばれ、同部屋で治療を受ける伊之助に善逸は常に話し掛けていたが、喉を負傷した伊之助が返事をする事はほぼなかった。
そんな伊之助が反応を示したのは小波についてだった。
「小波は!?まだ戻ってないの!?」
善逸は伊之助と小波が行動を共にしていた可能性が高いと感じ、尋ねてみた。
「…もどってる」
伊之助は善逸の問いかけに対して、言霊の籠らない返事をした。
「え!元気なっ!!
声なんか変だし!!叫び過ぎた?
うーん、でもそっかぁ。小波は病室違うのかなぁ…元気かなぁ…怪我、してないかな……」
「…俺が…よわいから…小波はけがした…」
伊之助と小波が共に此方に運ばれて来た時、小波の意識は未だ戻っていなかった。
「おい!!小波は助かるんだろ!!」
「大丈夫ですから!あなただって負傷してるんですから、大声出さないでください!!」
「じゃあなんでずっと目ぇ開けねぇんだよ!!
おい!小波!!」
バタンッ
小波から離れまいとする伊之助は、隠によって抑えられていたが、小波の病室の扉が閉まると、全身の力が抜けたかのように膝から崩れ落ちた。
それからはずっと上の空で、先に到着していた善逸と再会した時にも今のような状態だった。
しばらく経つと、炭治郎と禰豆子も伊之助達の元へ来た。
彼らも同じく満身創痍で、すぐに治療が必要だった。禰豆子は回復の為にしばしの睡眠をとることになった。
炭治郎は、鬼殺隊であるにも関わらず鬼を連れている事で、鬼殺隊の本部である産屋敷邸に連行されていたために、蝶屋敷への到着が遅れてしまった。
炭治郎は隠に背負われ、蝶屋敷で働く鬼殺隊員である神崎アオイに誘導されて伊之助達の病室へとやって来た。
善逸は激不味解毒薬に駄々を捏ねて、屋敷の子を困らせていた。アオイが善逸を怒鳴りつけたことで、善逸は炭治郎に気付いた。
「静かになさってください!いい加減にしないと縛りますよ!」
「善逸!大丈夫か!?怪我したのか!?
山に入ってきてくれたんだな!!」
善逸は炭治郎の顔を見て、やっと安心したのか、ホロリと涙を零した後に、鼻水と涙を決壊させた。
「た…炭治郎…
うわぁぁー!聞いてくれよ!
臭い蜘蛛に刺されるし、毒ですごい痛かったんだよーっ!
さっきからあの女の子にガミガミ怒られるし…もう最悪だよー!!」
そして善逸の体液は炭治郎を背負っていた、後藤という隠の隊服に染み込まれていくのであった。
「伊之助や小波や村田さんは?」
炭治郎は、自身の怪我に加えて、下弦の鬼を討った事、産屋敷邸では目の前で禰豆子を刺され、自らの危機でもあった事等、多くの出来事が荒波の様に押し寄せていたにも関わらず、それでも仲間達の心配をしていた。
「村田さんて人は知らないけど、伊之助ならずっと隣にいるよ。
それと、小波も怪我したみたいで…病室は別みたいだよ。」
「あぁ、本当だ!伊之助!無事でよかった…!
助けに行ってやれなくてごめんな…!」
炭治郎は隠の背中から崩れ落ちながら、伊之助のベッドへ向かい、そして布団にしがみついた。
「…イイヨ
…キニシナクテ」
炭治郎は伊之助の様子が明らかにおかしいと感じ、本人かどうか疑う程だった。
「え!?伊之助…なのか?」
「なんか詳しい事はわかんないけど…首をガッとやられて、その後自分で大声出したのが止めだったらしいよ。」
ずっと落ち込んでてさ、なんか丸くなってておかしいんだよな…と善逸は変な笑い声を上げた。
笑い声まで蜘蛛の毒にやられてしまったのだろうか。
「…うーん、そうなのか。
でも、命があって良かった…。
小波は大丈夫なのか?酷い怪我なのか?」
「…俺のせいで…
…小波、けがした…」
伊之助は少し間を空けて炭治郎の問いに答えた。
伊之助を纏う匂いが、音が、あまりにも悲しく辛く、重かったので、炭治郎も善逸も、言葉に詰まってしまった。
「小波…伊之助…」
「小波…大丈夫かな…今はまだ会えないって、さっきの女の子が言ってたよ…」
面会謝絶になるほどの重症である小波を心配し、三人はまた黙り込んだ。
「炭治郎は、伊之助と一緒じゃなかったんだろ?
どうしてたんだ?」
善逸に尋ねられ、炭治郎は今までの経緯を二人に話した。
炭治郎は小波や伊之助達が父鬼、兄鬼と対峙している時、下弦の伍と戦っていた。
そしてそれは、母鬼に操られた隊員達によって足止めされていた時に現れた、少年の鬼だった。
つまりその鬼が鬼の"家族"と呼ばれる偽の繋がりを作った存在だったのだ。
そして酷い痛みと疲労に襲われながらも、産屋敷邸に連行され、炭治郎の兄弟子で水柱の冨岡義勇以外の柱達から酷い仕打ちを受けたのだった。
炭治郎も、辛かった。
なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだと、叫びたかった。
しかし彼の性格上、それを表には出さないため、善逸が「酷い人達だねぇ」「大変だったんだねぇ…」「俺なら死んじゃう…」等と、代わりに弱音を吐いてくれるので、炭治郎の心も軽くなる。
炭治郎は全身の打ち身と、さらに至る所の切り傷によって失血が酷く、伊之助や善逸と同様、しばらく安静にする必要があった。
善逸は大きな怪我等は少なかったものの、毒による症状は重かった。
しかし、蟲柱が調合した激不味の解毒薬を毎日飲むことで、少しずつ症状が良くなっていった。
痛みに耐える炭治郎、酷く落ち込む伊之助、薬を飲むのを嫌がる善逸の三人は、同じ病室で数日を過ごしていた。
しかし、小波に面会出来るようになるまでは、どこか皆、心落ち着かない様子だった。
─大切な女の子が自分のせいで大怪我したら、煩い伊之助でも流石に堪えるよなぁ…
自分だったらどうなるんだろ…伊之助の心中を察した善逸は、しばらく伊之助に憎まれ口を叩く事はなかった。