第五章 那田蜘蛛山
名前設定
鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それからどうやって木の下敷きから這い出られたのか、覚えてはいない。
左足はぐちゃぐちゃだ。
それでも私は刀を拾い、伊之助と鬼の方へ駆けていった。
私の気配を感じた鬼は、自身の首に刺さった刀を一本こちらに投げてきた。
刀ではじいたが、その後すぐにもう一本が私の腹めがけて飛んできて、鈍い音を立てて刺さる。
その痛みなどは全く感じなかった。
「……ぐっ……小波………」
伊之助を救う事しか頭になかった。
「手をはなせぇぇ!!」
鬼の手首…できるだけ細く、筋肉の少ない部分を選んだのは冷静な判断ではなく本能だったと思う。
私は最後の力を振り絞って手首を切り落とした。
途中で刀が止まってしまわないように、刃が切り抜けるまでありったけの力を刀に込めた。
鬼の手首がズルリと斬られ、鬼の大きな手と伊之助が地面に落ちると、私は鬼の残った方の手で、遠くに飛ばされてしまった。
「っ!!
小波っ!!」
伊之助はフラフラとした足取りで私の所に駆け寄ってくる。
私の事より、鬼を早く…そう言いたいが、もう声を出す力すら残っていなかった。
血だらけの伊之助の背後に、鬼の拳が見えた。
私が目を見開くと、伊之助もハッとして後ろを見る。
拳が伊之助に届く瞬間、鬼の腕は消え、切り口から血が噴き出すだけだった。
「誰だ!?」
伊之助は状況を見据えながら私を抱える。
すると、伊之助の肩越しに、鬼と…特徴的な羽織を着た男の人が見えた。
髪は長く、後ろで一つに結い、隊服を着ている。
きっと助けに来てくれた人だ。
鬼の腕をいとも簡単に斬ってしまった。
朦朧とする意識のせいか、全てがスローモーションに見える。
それでもその人が鬼をバラバラに斬るのは一瞬の出来事だった。
もう大丈夫…
そう思った瞬間、ふっと全身の力が抜けてしまう。
「おい?…小波?」
私の身体の重みを感じた伊之助は私の方を見やる。
私は伊之助の、一番出血の酷い傷の止血を行った。
次に右手を伸ばし、伊之助の喉に触れた。
咽頭部も気管も酷く傷付き、出血していた。
放っておけば声が出なくなってしまう所だった。
「…は?お前、何やってんだよ…
自分の怪我、なんとかしろよ……」
伊之助は私の右手に触れるが、私は頑なに手を退けず、治療し続けた。
伊之助の、私を抱える腕も声も震えていた。
そんなに今の私は酷い姿をしているのだろうか。
ああ、お腹に刀が刺さっているのだった。
左足は…感覚がないな。
伊之助の喉を止血し炎症を抑えると、今度は自分の腹部に刺さる刀を抜いた。
伊之助の刀は痛いな…ぼんやりとそんな事を考えながら、呼吸を使って同時に止血もしながら上手く抜く事ができた。
幸い、折れた刀はそう深くは刺さらなかった。
役目を終えた私の右手はぼとりと落ちた。
瞼が重い…
「おい、小波?
っ…死ぬな!!
ふざけんじゃねぇぞっ!!」
伊之助の涙声が聞こえる。
良かった…。嗄れてるけど、声は出てるね。
大丈夫、少し疲れただけだよ。死なないよ…
それを伝える事はできず、私の意識は途絶えた。