第五章 那田蜘蛛山
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鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
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私は伊之助、炭治郎と別れ、村田さんと共に蜘蛛の糸に操られる鬼殺隊員達と立ち向かっていた。
隊員達を木に括り付ける等して動きを封じたかったが、相手の数が多く、それは不可能だった。
私は頭上に現れた少年の姿の鬼が言っていた、"家族"という言葉を思い返していた。
通常、鬼は協力などしない。
また、共喰いもしない。
鬼は人間を捕食するという本能に従っているだけである。
しかしあの鬼は、自分は一人ではないという口振りで脅迫してきた。
この糸を操っている鬼は、恐らく"家族"の内の一人なのだろう。
"母さん"とも言っていた。
伊之助と炭治郎は、その母さん鬼(仮)の首を落としに行ったのだ。
それでは、父親もいるはずだ。
もしかしたら兄弟もいるのかもしれない。
この那田蜘蛛山には、家族関係で結ばれた鬼の群れがいるのだ。
下の階級の隊員では歯が立たないのも頷ける。
私は伊之助、炭治郎の身を案じた。
─それじゃあ小波を守れねぇ!
─離れんな!!
そんな伊之助の言葉を思い出した。
「任せる」と言って、彼らを危険な目に遭わせ、自分は安全な方に残ってしまった事を悔やむ。
伊之助達が母と言われる鬼を討ち取ったら、私はすぐさま彼らと合流しなければならない。
「村田さん!
鬼は複数いると思われるので、私はこの人達を手当したらすぐに彼らに合流します!」
私は屈みながら攻撃を避け、後方に飛びつつ糸を切った。
攻撃パターンが単純なので、大分慣れてきた。
私は村田さんに目配せしながらそう言った。
「あぁ!俺もそうする!」
「それは駄目です!
村田さんは怪我を負っているので、ここに残って、息がある隊員達を見ていてください!」
村田さんは、先方の隊の生き残りとしての責任を感じているのか、後輩の伊之助達が先に進んだ事を気にしているのか、鬼の討伐に参加する気満々だ。
しかし、黒い隊服のせいで見えにくいが、村田さんも至る所から出血している。
「君…」
「小波です!」
「小波さん、さっきから俺に指示してるね!?一応、俺、先輩ね!?」
「……う、まぁ…そうですが…
でも!怪我人を戦いに向かわせるのは私のポリシーに反するので、駄目です!
私には、この先にいる人達も手当するという義務もあるので!私が行きます!」
任務遂行の効率も鑑みながら、先輩である村田さんにキッパリと告げた。
もちろん、自分が後輩であるという事は重々承知している。
しかし、怪我人に先輩後輩もない。
「村田さんは出血が酷いので、先に進んでも倒れるのは時間の問題です!
申し訳ないですが、私が先に行かせていただきます!」
自分の怪我の具合を改めて他人に突き付けられ、その痛みを思い出したのか、申し訳なさそうに村田さんは顔を顰めた。
それでも攻撃を交わし、糸を切る手は止めない。
「力になれずすまない…。」
「いえ、村田さんがここに生き残ってくれた事に、大きな意味があります!
伊之助達も、きっともうすぐでしょう!」
そんな言葉を交わして幾許か経った頃、隊員達の糸がふわっと宙に消えた。
伊之助達が鬼を討ったのだ。
私と村田さんは刀を一旦鞘に収めた。
「私は息のある隊員の手当を行います!」
私は地面に倒れている、息のある隊員の止血や鎮痛等の応急処置を行った。
村田さんは骨の折れている隊員の患部を木の枝と包帯でグルグル巻きに固定した。
既に亡くなっていた隊員もいた。
…間に合わなかった。
操られて私達と対峙している時に、息を引き取った可能性も考えられた。
先程までは生きていたのではないかと思うと、自分自身の無力さが腹立たしく思う。
操られている隊員と向き合っていた時には気付かなかったが、この山は鳥の鳴き声も虫の声も聞こえず、不気味な程に静かだ。
そんな中で処置をしていると、嫌でも遠くから衝撃音や木の倒れる音などが聞こえてくる。
伊之助達は今も尚戦っている。
すぐに合流しなければ、彼らも危ない。
私は処置を終えると、後の事は村田さんに任せ、音のする方に駆けて行った。