第四章 鼓屋敷
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鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
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道中の会話では、炭治郎は任務完了後、間髪入れずに鼓屋敷での任務の指示が出た事、
鼓の鬼は伊之助ではなく炭治郎が始末した事、
善逸くんが鬼に襲われた際、いつの間にか鬼の首が落ちていて、それは正一くんの手柄だと思っている事、
…等々が判明した。
「炭治郎、凄く大変だったのね…お疲れ様だね…。」
私は炭治郎の強さと根性にただただ脱帽した。
「はは…。でも今は、小波のおかげで大分楽だよ。ありがとう。」
「ん、お役に立てて良かった。でも善逸くんはさ、それ、自分でやったとか思わないの?日輪刀も持たない正一くんがどうやって鬼の首を落とすのよ…」
そう、やはり疑問なのは善逸くんについてだ。
最終選別の時から思っていたのだが、どうにも弱そうには見えない。
弱かったら、最終選別を潜り抜けては来ないだろう。
「いやいやいやいや何言っちゃってんの?俺弱いんだぜ?正一くんがシュバッと、隠された力を解き放って俺を守ってくれたとしか思えない……
……ん?というかさ、なんでさ、小波は俺にだけ「くん」付けなの?
…なんか寂しいなぁ…」
「んー…心の距離?」
あえて少し間を開けて、真剣な表情でそう答えると、善逸くんは目から滝のように涙を流して泣き出す。
「えぇぇえ!?ひどいっ!ひどいよぉ!俺達、仲良くなったんじゃないの!?手当てしてもらった仲じゃんかぁ!
……あ…そう言えば………最終選別の時に預かった、小波の宝物……返すよ…。
…うぅ…あの時は…ごめんね?小波も命懸けなのに、俺縋り付いて困らせちゃった…。
……それで、これ…返すからさぁ……
…俺の事も呼び捨てにしてよぉぉぉ!!!」
一度泣きやみ、落ち着いて素直に謝罪し、私の宝物である貝殻のブローチを差し出した途端、また縋り付いてきた。私の腰に抱き着く姿は、まるで最終選別初日のようだ。
「ごめんごめん、心の距離は冗談だよ!もう…そんなに泣かなくったっていいじゃない…。
ん、ちゃんと大事に持っててくれてありがとうね、善逸。
……これでいい?」
改めて、呼び捨てを意識して名前を呼ぶといくらか気恥しいものがある。
しかしそれを隠すのももっと恥ずかしいので、へへ、と笑みを漏らした。善逸は、
「きゃぁぁぁぁ!!嬉しいよぉ!ウフフフフ」
汚い高音を出しながら喜ぶものだから、私の気恥しさも一瞬で消え去った。
そして、私と善逸の心の距離が縮まった事を素直に喜ぶ炭治郎は、ニコニコと私達の様子を温かく見守っていた。
しかし、渋々頭突きを辞め、私達の数歩先を歩いていた伊之助は、面白くないような様子だった。
「おい鉛筆!小波から離れろ!!」
そう言って、私にへばりついていた善逸に頭突きし、引き剥がした。
私は足腰の疲労でくたくただった所に、善逸の重みが足への負担を増していたので、正直なところ、伊之助には感謝した。
鉛筆ではなく善逸だけど…。
「はぁぁ!?鉛筆って誰だよ!!俺はぜ・ん・い・つ!!我妻、善逸!!」
「紋逸!!小波にひっつくんじゃねぇ!!」
「誰だよ!!」
名前を覚える気のない伊之助だが、善逸を引き剥がすと何気なく私を後ろ手に隠すようにして、私と善逸の間に割って入っていた。
伊之助のごつごつした背中越しに見える、2人の漫談のようなやりとりに、私と炭治郎は苦笑する。
先程は、「竈門炭治郎」の名前を「かまぼこ権八郎」などと掠りもしない言い間違えをしており、私達は既視感を覚えていた。
伊之助は、名前を覚えるのが苦手だったのかと、新たな一面を知った私だったが、炭治郎のふとした一言で私は頭を抱えた。
「伊之助は、どうして小波の名前は間違えずにしっかり言えるんだ?」
「あぁっ!!!そうだよ!!ていうか!なんで!お前みたいな奴が!小波みたいな可愛い女の子と一緒に行動してるんだよ!!!」
私は2人のそれぞれの質問に答えるのが億劫になり、いやぁそれ程でも…と、とりあえず善逸の褒め言葉のみに応答した。
しかし、鼻から伊之助の答えに期待をしていない炭治郎と善逸が、何やら疑るような目で私を見てくる。
それに負けじと劣らず、私も伊之助をじっと見てみた。
「あぁ!?小波は小波だろ!!なんで間違えんだよ!!
小波と一緒にいたら悪ぃのかよ!!
小波はなぁ、俺がいねぇとわーわー泣く「あーあーあー!!!分かった!私が話すから!!伊之助はいらん事言うな!」
私は根も葉もない事を言われる前に(正直間違ってはいないが…)、私なりの解釈と、今までの経緯を話した。
「………という訳で、私達は友達のような、家族とまではいかない兄弟のような、そんな感じ…かなぁ。
それと、伊之助がまだ幼くて、知識の吸収が速い時に名前を覚えてもらえたから、今でも正しく呼んでもらえてる…のかなぁ?」
ねえ?と伊之助の方を見ると、どこか彼方を見ていて話を聞いてるのか聞いていないのか伺えなかったが、突然炭治郎と善逸を指差して得意げに言った。
「要は、お前らは手遅れだって事だぜ!!!残念だったなぁ!!!アハハハハ!!!」
「…はいはい、相思相愛って事が痛いくらい分かりましたよ…。」
善逸は、お手上げの格好をして呆れたように何か言っていたが、伊之助の煩い笑い声で聞き取れなかった。
炭治郎は先程のように私達3人に笑いかけ、
「仲が良い事は良い事だ!!」
と上手く纏めようとしてくる。
下の兄弟達がわちゃわちゃ楽しそうに遊ぶ姿を嬉しそうに見守る兄のようだ。
「ま、ほんとそうだね!
伊之助と再会出来たのはもちろん嬉しいけど、炭治郎や善逸と出会えたのも嬉しいね。」
私は心の底からそう思った。
鬼滅隊に入ると志してから、同年代の人と関わる事が皆無だったからだ。入隊して直ぐに、伊之助に再会でき、良い仲間に恵まれるという事は、奇跡に近いと思っていた。
「おい!!どっちが嬉しいんだ!!俺だろ!!おいっ!!」
そんな伊之助の声も可愛く聞こえる程のホワホワとした気持ちで、私は皆と目的地に向かった。