第四章 鼓屋敷
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鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
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クロの後を追うように走ると、山の中に一軒の屋敷を見付けた。
私は気配を殺しながら戸をゆっくり開けると、伊之助がその隙間から正に猪のように突進して中に入って行ってしまった。
「猪突猛進!!猪突猛進!!ハハハハ!!!
鬼!鬼はどこだァァ!!!」
「ええぇ…嘘でしょ…。
……はぁ。」
私は予想以上の伊之助の野生らしさにため息を吐きながら建物内に入った。
(いや、あの突っ込み方は野生動物以上かも…。)
そう考えながら廊下を歩いていると、遠くから聞こえていた伊之助の声も足音も急にぱったりとしなくなった。
伊之助に最悪の事態が起きたのかと駆け出すと、「ポンッ」と鼓のような音が聞こえた。
私は廊下から部屋の中へ移動すると、また聞こえてきた。
その瞬間、私がいた部屋が別の部屋に変わっていた。
(鼓を叩くと瞬間移動したみたいに、居場所が変わるんだ。
それで伊之助の気配が突然消えたのか。
鬼の仕業?でも、それじゃ獲物である人間にも近付けないんじゃ…)
私は何か規則性がある筈だと考え、次々と変わっていく部屋の特徴を覚える事でこの絡繰を解き明かそうとした。
何回目かの鼓の音の後、廊下を騒々しく走る音が聞こえてきた。
「伊之助!?」
私は音が聞こえる方の襖を開けると、丁度伊之助が過ぎ去って行こうとする所だった。
辛うじて私の声が届いたのか、伊之助が急ブレーキをかけた瞬間、
「ポンッ」
「小波!!!」
また部屋が変わってしまった。
部屋を移動する事、3日は経っただろうか。
この屋敷の外観の大きさと、部屋の数が割に合わないという事、既に誰かが存在している部屋には移動しない、という事は判明したが、鬼を見付ける事は出来なかった。
私も伊之助を見習って、駆け回ってみたものの、事態は好転しない。
鼓の音のみが聞こえてくる屋敷を彷徨っていると、鼓の空耳が聞こえるほどになってしまった。
もう聞き飽きた数十回目の鼓の音の後、廊下からドンッという鈍い音が聞こえた。
私はそっと襖を開けて様子を窺うと、床には血塗れた人間の姿があった。腕は千切れて転がっていた。
その人に近付き、脈を確かめてみる。
ほんのり体温は温かかったが、もう既に事切れた後だった。
(間に合わなかった…)
その時、私の肩に何かが落ちてきた。
直ぐにそれが血だと分かり、上を向くと鬼が蜘蛛のように天井に這っていた。
「この人を殺したのはお前か!!」
私は鬼との距離をとって刀を抜いた。
「こいつが勝手に死んだんだよ…痩せこけた男は不味いなア…もうそれは要らない…
他の鬼にくれてやる…
それより…お前は美味そうだなァア!!!!」
鬼は天井を這って近付こうとしてくる。
私は自身の大太刀を鞘に収めた。
「アハハハハ!!!諦めたのか!!俺が美味しく喰ってやるよォォオ!!!」
「…私の間合いに入った時、お前の首は堕ちる。」
海の呼吸…壱の型 うねり斬り!!!
火花を散らしながら大太刀を鞘から引き抜く。
鞘から切先を放てば、大太刀は嵐の海のうねりの如く、鬼の首に叩きつけるように届いた。
ゴトンッ、鬼の首が私の足元に転がった後、低い音を立てて体も落ちてきた。
「一瞬で死ねて幸せだなぁ。あの人は死ぬまで痛みに苦しんだんだぞ。」
私は足元の鬼を睨みつけながら、冷たく言い放ち刀を鞘に収めた。
「ゲヘッ…あ゛ぁ…死ぬ前に女の子の御御足が見れて幸せだなァァ…」
私は本物よりも鬼の形相で、その鬼の頭を思い切り踏みつけ、床に擦り付けてあっという間に灰にしてやった。
(あの鬼、「他の鬼」って言ってたな、まだ複数いるのか…?)
まだ任務は終わっていない、という事だ。
私は先程の男の遺体を廊下ではなく部屋に横たえ、両手を合わせた。
(後で、必ず埋葬します。待っていてください。)
私は再び屋敷の中を歩き出した。