第四章 鼓屋敷
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鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
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町の服屋で黒の長い靴下とブーツを購入し、肌の面積を減らすことに成功した。
激しく動くと膝上の、俗に言う絶対領域が少し見えるが、足首までしかない足袋よりはいいかと思い、それにした。
別に私の絶対領域とか誰得だし?
恋柱様の絶対領域の方が遥かに眼福だし?
おっさん染みた事を考えながら、服屋を出て伊之助のところへ向かう。
「えへ、ごめーん、待ったぁ?」
連れ添う男女のやり取りを真似て、伊之助にそう声を掛けながらわざとらしく小走りで寄っていく。
私の服装の変化に気付く事に微塵も期待せずに。
「おっせーぞ!!子分のくせに親分を待たせるとはいい度胸だな!!」
地団駄を踏みながら予想通りの反応を示す伊之助。
そりゃそうだ。食事処に行く前に、服屋に寄ってもらったのだから。
「ほんと、ごめんごめん。さ、何食べようか?」
私は顔の前で両手を合わせて詫び、食事処へ足を進めた。
「肉!魚!それが食えりゃなんでもいい!!」
流石、町の食事処には普段目にしないような西洋の方から来た食事も目に入ってきた。
私はご飯を卵で包んで何やら赤いソースをかけた「オムライス」というもの、伊之助は肉に衣を付けて油で揚げた「トンカツ」というものを頂いた。
運ばれた時に二人して目を丸くして口をあんぐり開けるものだから、売り子さんは可笑しくて笑っていた。
赤いソースは「ケチャップ」という、トマトや色々な調味料で出来たもので、
伊之助の頼んだ「トンカツ」は、豚肉に「パン粉」というもものをまぶして油で揚げるそうだ。
私は目を輝かせながらそれぞれの材料や作り方を店の方に聞いて覚えた。
いつか、おじいちゃん達や師匠の海勢頭さんに作ってあげようと思っていたのだ。
一方伊之助は、トンカツが来るや否や、猪頭を脇に置くとすぐに手掴みで口へ放り込んでいった。うめぇぇぇ!!と目を輝かせる。
半裸、なのに顔は美少年、手掴み食い、注目される要素満載の伊之助を見て私は小さくため息を吐く。
「まぁ、お箸なんて文化知らないもんねぇ。
でもなぁ…………あっ。」
私は自分の所に置かれたスプーンとフォークを見て閃いた。
「ねぇ伊之助、食事の時は基本こういうお箸とかの道具を使うのね。
でもお箸は多分まだ難しいから、私のフォークで刺して食べてみようよ。」
そう言って、伊之助の前に置かれたお箸と、私のフォークを交換した。
「あぁぁ!!?いらねぇ!食いづれぇ!!」
「……はぁ、そっか…。子分の私にも出来るんだし、親分の伊之助なら簡単かと思ったんだけどなぁ…。」
私はわざとらしく肩を竦めて眉を下げる。
「っだァァ!!使えるわァァ!!」
すると伊之助はフォークをグーの手で握り、トンカツやご飯を食べ始めた。
左手でお茶碗を持つと食べ易いよと教えると、観念したのか、ふんっと鼻を鳴らして素直に両手を使って食べ始める。
不便そうな様子に少し可哀想な気もしたが、心を鬼にし、私もオムライスを頂いた。
オムライスあげるから一口ちょうだい?と言うと、伊之助は一時停止してトンカツと貰ったオムライスを見つめた後、皿の上のトンカツを一切れフォークで刺し、ずいっと私の口元に差し出した。
他人の食料を奪うことはあっても、自分の食べ物を他人に分け与えるという経験は初めてなのだろう。
恐らく、自分の食料が減ってしまう事を懸念したが、その前に私にオムライスを分けてもらった事を思い出し、決心したのだと思う。
私にとっては何気ない一言だったが、そこまで考えさせてしまい少し申し訳なく思った。
フォークを取ろうと私がスプーンを置くのと同時に、
「あ?食わねぇのか?」
と、さらに近付けてきたので、私は軽く身を乗り出してトンカツを一口貰った。
サクッとした歯ごたえと、口内に広がる肉汁が最高だった。
最後にデザートを噛み締めていると、私の鎹鴉が肩に乗ってきた。
「クロ!」
「南西に鬼!南西に鬼!小波、気を付けて!」
私の鎹鴉は、本名が長くて言い難かったので、「クロ」と勝手に名付けて可愛がっている。
鴉は、近くで見ると意外と可愛い顔をしているのだ。
近くに指を出すと、スリスリと頭を擦り寄せてくる。…どこかの誰かさんみたいだ。
「南西だって!行こう!!!」
「うぉぉぉ!!!猪突猛進!猪突猛進!小波!早くしろ!!!」
私達はデザートをかき込んで、勢いよく席を立った。
私がお代を払っている間にも、伊之助はどんどん先に進んでしまった。
私も初の任務に緊張感を抱きながら、伊之助とクロを追うように走っていった。