第三章 再会
名前設定
鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
斬った鬼が灰となり、踵を返そうとした小波の背中に、突然何かがぶつかったと思った瞬間には、腰にまで手が回っていた。
「ぅわぁぁぁぁ!!!!
こわかったよぉぉぉ。
助かったよぉぉぉ!!!
ありがとぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
小波が首を後ろに捻って確認すると、先程の金髪の男が滝のように涙を流して自身の腰にしがみついていたのであった。
「ぇええっ?ちょ…っと、…ぅう。」
小波は、無理矢理引き剥がすのも少し可哀想だと思い、あからさまに困った表情を浮かべると、小さく溜め息を吐いてからその肩越しに見える金髪の上に手を置いた。
「はい、はい。良かったねぇ。」
良かった良かったと、たか兄にされるように、その金髪頭をポンポンと撫でた。
すると段々と気持ちが落ち着いてきた金髪頭は顔だけ離して小波を見上げた。
「きみ、つよいんだね…刀、長いんだね…。」
眉を八の字に下げて弱々しく話すその男はまるで小動物のようだった。
(女の子だったら超絶可愛いのにな…)
小波はそう思いながらも口にはせず、今度はお腹に回されている手をポンポンと叩いた。
「あの…ちょっと離してくれる…?」
金髪男は暫し目線を落とした後、手の力を抜いた。
「……あ……うん、…ごめん。」
するりと手を離した男から遠ざかるように、小波は1歩離れて男の方に向き直った。
「きみ、凄く足が速かった。」
攻撃に回ればいいのに、小波は心から感心しながらそう言った。
「俺、いつも逃げてばっかりで…だから逃げ足は早いかもしんないけどさ、でも全然強くないのに俺なんで最終選別なんて受けてんの………。
今助かっても次は絶対死ぬよぉぉ。
あぁ、俺……我妻善逸っていいます。
って名乗ってもどうせすぐ死ぬけど。
俺の名前なんて、きっと誰にも知られず、鬼に喰われて死体も残らないんだよきっと。ああもうダメだ俺なんてすぐ死ぬ。死ぬ死ぬ。」
眉も目も八の字にして、口を尖らせてボソボソと話す彼があまりにもネガティブだったので、どうしたものかと小波も釣られて眉を下げてしまった。
しかし、心優しい小波はこの男…善逸を放置は出来なかった。このままでは埒が明かないと思い、言葉に迷いながらも口を開いた。
「えっと……善逸くん?聞こえてる?
あの、私は、大波小波です。
また会お………あの…善逸くん?
あの……ちょ…聞いて?」
その金髪男もとい善逸は、顔を真っ白にして白目を剥き、再び泣き出してしまった。
「ぁぁあああ!!!もうダメだ!!!!
俺は死ぬ。死ぬ死ぬ。死ぬしかない。生き残れる訳ないだろぉぉぉ!!
生き残ったってすぐ鬼に喰われる。
ああ、俺はもうダメだぁぁぁ!!」
またピーピー泣き出した彼を尻目に、小波は月の位置を確かめた。
「ああっ!!もうかなり時間が経っちゃった!善逸くん、ごめんねっ!私行くね!ほんとごめん!でもあなたは強い!大丈夫!!勝てる!!じゃ!!」
雑な励ましの言葉をかけた後、またね!と言って小波は善逸から離れた。
「いやだぁぁぁ!!
待ってよ小波ちゃぁぁぁん!!
俺を守ってくれよぉぉぉ!」
独特な語尾上がりの泣き声を上げ、また小波に縋ってきた。
しかし、もうのんびりしている時間はない。
小波は自身の帯に縫い付けていたブローチの糸を引きちぎり、それを善逸に押し付けた。
突然の事に驚いた善逸から走って離れながら、小波は伝えた。
「それ、私の宝物!
だから、生き残って、鬼殺隊に入って、次会えた時に、返して!
絶対にね!!」
頑張ろう!と言って走り去る小波とブローチを交互に見ながら、善逸は立ち止まっていた。
耳の良い善逸には、小波の言葉に嘘の音は聞こえなかった。
だからか、俺を守ってと、追いかける事が出来なかった。
自分より一回り小さい女の子の、大切な宝物を受け取って、それに応えない訳にはいかなかったのだ。
(ぅぅぅぅ…。また一人になっちゃったよぉぉぉ。
…ん?……なんだろう、このブローチ。
小波ちゃんは宝物って言ってたけど……貝殻?)
そのブローチは、小波が初めて海を見に行った時、海勢頭に貰った物だった。
どこも欠けておらず、綺麗な形を保った純白の貝殻。
内側はオパールのような虹色に輝いていた。
小波はその貝殻をブローチにし、帯に縫い付けて常に身に付けていた。
(大丈夫。あのブローチはきっと戻ってくる。
…善逸くん、約束守れなかったらぶっ飛ばす……!!!!)
「ひぃぃっ!?」
鬼もいない所で小さく悲鳴を上げる善逸であった。