第三章 再会
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鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
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どんなに急いでも、7日間この山に滞在するという事は変わらない。
かといって、一箇所に留まっていては伊之助と遭遇する可能性は低くなる。
そこで小波は、昼間は日没まで山の西側で休息をとり、その後身を潜めながら夜明けまでに東へ移動するという作戦を実行する事にした。
(とにかく、自分が生き残る事を優先しないと………命を落としてしまったら、伊之助にもおじいちゃん達にも師匠にも会えない)
小波は身を屈め、なるべく速い速度で東を目指した。
(開始時よりも、月があの辺から今の位置に動いたから、多分あっちが東………かな?
多分だけど!!!)
小波は月の動き方等の知識はあるが、極度の方向音痴だったために、東という方向も何となくしか割り出せなかった。
師を求めて旅をしていた時に、北に向かうつもりで南に進んでいた経験が、小波の自信を抉り取る。
さらには、耳を澄ませると微かに聞こえてくる悲鳴や破壊音がより緊張と恐怖を与えてきた。
小波が深い茂みの中に隠れて、乱れた息を整えている時、鬼なのか人間なのか判別出来ないような汚い叫び声が聞こえた。
「ィア゛ア゛ァァァァァァー!!!!!」
小波はそれが聞こえた瞬間、息を殺して柄に手を添え、辺りを窺った。
その声の主は案外すぐに見つかった。髪と羽織が目立つ色をしていたからだ。
(鬼に追いかけられてる!……でも、随分と逃げ足が速いな…。)
(その足の速さ、攻撃に生かせそうなものだけど。)
小波はその者を冷静に分析しつつも、刀を鞘から引き抜いた。
鬼の首目がけて両腕を伸ばし、刀の切先を鬼のいる方に向けた。
─小波は傷付いた人間を癒す力がある。
ある日の修行中、海勢頭は小波に告げた。
─だからこそ、お前は鬼に近付かずに首を斬らなくてはならない。
─最長の間合い・最小の動きで鬼を切り、己を守るんじゃ。
─この刀は、儂の刀鍛冶に頼んで特別に打ってもらったものだ。
小波はその大太刀の切先に渾身の力を込めた。
全集中・海の呼吸……
…弐の型 飛魚!!
小波は両腕を伸ばし、自身の長い刀の切先で鬼の首を斬った。
(今、何が起きたの………?
女の子なのに、俺よりも長い刀を使ってる………
それなのに、あんな小さくて鋭い太刀筋、初めて見た……)
逃げていた金髪頭は小波の剣技に呆気に取られてしまった。
鬼の胴体が倒れ、首だけがゴロゴロと転がる。
日輪刀で鬼を斬るのは初めてだったため、小波は息を整えながら、灰になっていく鬼を見つめていた。
(鬼になる前、どんな人間だったのだろうか…)
それ以上は何も考えず、消えゆくまで見届けていた。