第三章 再会
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鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
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海勢頭さんの家から2日かけて、最終選別の会場、藤襲山に辿り着いた。
私は尋常小学校に通っていた時も、団子屋で働いていた時も、時間に遅れることを非常に嫌い、余裕をもって家を出て、早い時間から現地入りするような人間だった。
周りの人からは、「小波ちゃんは真面目だねぇ。」とよく言われていた。
しかし、私はただ、定刻より早めに到着してから、ゆっくり過ごす時間が好きなだけだった。
今回の最終選別も、開始時間は決まっていたため、なるべく早く到着出来るよう逆算しながらこちらを目指してきた。
自分でも早く着きすぎてしまったかと思ったが、それでも私より早くに到着していた人達がいた。
私は定刻まで、近くにあった岩に座って、海勢頭さんから教えて貰った沢山の事を振り返る事にした。
私は考える時、目を瞑れない人間だった。
目を閉じた時の暗闇がなんだか落ち着かないからだ。
そのため、考え事をする時には俯いて、ある一点をじっと見つめる癖があった。
そういう訳で地面に転がっていた小石をじっと見つめながら集中していると、定刻がじりじりと近付いてきた。
私は集中を解いて今度は空を見上げていると、近くにいた男2人組の話し声が耳に入ってきた。
「なんか、さっき知り合った男に聞いたんやけど、俺達よりも一足先に山に入っていった奴がいるらしいで。」
「えぇぇっ!それ、説明とかも聞いてないんやないの!?それ突破したとしても鬼殺隊に入れるんか!?」
「いやなんかな、その男が言うには、顔が猪だったらしいねん。」
「それは猪やないかい。顔が猪だったらそれはもう完全に猪や。選別とか知らんから山に入ってっただけや。」
ん?某牛乳かけて食べるアレ系芸人のやり取りか!?
私は心の中でつっこんだ。
いや、本当はその人達につっこみたかった。
しかしそれでは私の印象が悪くなるだけだと思い、我慢した。
話の内容よりも、その話しぶりに気を取られてしまったが、もう一度先程の2人組の話について再考してみた。
…………先に山に入った?
ずいぶんせっかちな人だな。
いや、人なのか?
…………顔が猪?
私は猪の顔を思い出してみた。
その時、海勢頭さんから最後の言葉を頂いた海辺で、私を襲った感覚が再度やってきた。
呼吸が浅くなって、何か大切な事を思いだそうと、脳がフル稼働している、あの感覚だ。
脳内に浮かんだ猪頭から意識を逸らさないよう、いつの間にか私は目を見開いていた。
そして、その猪の爪先まで描いていく。
私の描いたそれは、猪の姿をしていなかった。
2本の腕をもち、2本の足で立ち、腰にはお包みを巻いていた。
あぁ、私はなんて馬鹿なのだろう。
何が「尋常小学校での成績はトップの方だった。」だ。
こんなにも大切な人を忘れていたなんて。
私の初めての友達。
「………伊之助。」
私の頭の中に、伊之助と私の思い出が紙芝居のようにいくつも映し出された。
おじいちゃんの膝の上にいる伊之助。
一緒にお饅頭を食べている伊之助。
私を山に案内する伊之助。
ドングリを沢山抱えておじいちゃんに見せる伊之助。
「小波は俺に任せろ!」と胸を張る伊之助。
伊之助、ごめん。完全に忘れてたよ。
私は、頭の中に幼い伊之助を残し、状況と自分のやるべき事をふわふわする頭で必死に考えた。
(まず、何としても生き残る。
そして、伊之助がこの最終選別にいる。
この山の中にいる。
会わなきゃ。会って直接聞かなきゃ。)
突如姿を見せなくなった理由を。
すると、おかっぱ頭の少女が2人現れた。
透き通った綺麗な2人の声を何となく頭に入れて、
「行ってらっしゃいませ」
と同時に山へ入っていった。