第二章 成長
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鬼滅の刃たかはるとその祖父と3人で暮らしていたヒロインと伊之助の物語。
一応原作沿い。途中、抜けている部分があります。
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時は経ち、水の呼吸を扱う海勢頭さんの元で修行する事、約3年と半年、私はついに呼吸と型を身に付けた。
私は、水の呼吸を新たな呼吸へ派生させることにも成功した。
さらに、呼吸の仕組みを深く追求した私は、自身の呼吸と医療行為を結びつけた技も生み出した。
尋常小学校で読み書きを学んで居なかったら、医学を理解する事も出来なかったな…と、改めておじいちゃんやたか兄に感謝した。
海勢頭さんの家は、私が過ごしていた町より南に位置していた。
ここにお世話になって間もなく、私は海勢頭さんに連れられて、初めて海を見た。
初めての、水平線、波、砂浜、潮風に感動した。
修行や勉学の合間には、よく浜辺に休みに行くようになった。
海を見ると落ち着く。
私は海が大好きになった。
今日は快晴で、波は普段より一際穏やかだった。
陽の光が当たって、海水が翡翠色に反射して私の目に写る。
海という"大自然"を噛み締めていたその時、私の心臓は大きく脈打った。
自分の体温が上がるような、何かとても、大切な事を思い出すような感覚に襲われた。
しかしその後すぐに、何かを思い出すより前に、私は海勢頭さんに呼ばれた。
「小波、お前はもう強い。
儂が教えた呼吸も型も理解し、あろう事か独自の呼吸を生み出して身に付けてしまった。
儂の期待以上じゃった。
…よく頑張ったな。」
海勢頭さんは、よく私を褒めてくれた。
修行中には絶対に褒めないが、一緒にご飯を食べている時などの、心を落ち着かせている時には、しみじみと孫に声をかけるように褒めてくれた。
私はいつも嬉しかった。
(海勢頭さんは、私が褒められて伸びるタイプだって見抜いてくれてるんだ!嬉しい!!もっともっと頑張れる!)
私にそう思わせてくれる海勢頭さんを師として仰げる事を誇り高く思っていた。
そんな海勢頭さんは、浜辺にいた私の隣に腰を下ろして、先程の言葉を述べた。
「小波は、もう一人前の剣士としての力をつけた。
それに、人の傷を癒す術も身に付けた。
鬼殺隊に入ったら間違いなくすぐに活躍できるじゃろう。」
私は、なんとなく海勢頭さんの言いたい事は分かっていた。
しかし、恐らく海勢頭さんが私にかける、師としての最後の言葉であると思い、一言一句聞き逃さないように集中した。
波の音は聞こえなかった。
「じゃが、自身が強くなるという事は、それ相応の鬼と対峙するという事でもある。」
「はい。分かっています。」
私はそれだけ言って、後に続く言葉を待った。
「どうか、無事で居てくれ。
辛くなったら、顔を見せに来ておくれ。
ここは、お前の第2の家だと思っていいんじゃからな。」
私は、もう涙が溢れていた。
人前で涙する経験の無い私は、泣き顔を見せまいと俯いて、涙が頬を濡らさないようにした。
鼻を啜る音は波にかき消されていた。
海勢頭さんはそんな私の頭をポンポンと優しく叩き、そして私の肩に手を置いた。
「最終選別、必ず生き残って、立派な隊士になりなさい。」
私はぐっと目を閉じて涙を振り払い、海勢頭さんの目を強く見据えた。
「師匠、今まで、本当にありがとうございました…!
このご恩は、一生忘れません……!」
海勢頭さんは、涙を浮かべながら、にっこりと笑ってくれた。
今日の日を忘れないよう、海勢頭さんの姿、家、庭に咲く花、そして海を、目に焼き付けた。
そして翌日、私は師匠に頂いた鬼を狩る為の日輪刀を携え、最終選別へと向かっていった。