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『ねるが笑っててくれるならそれでいい』
顔を真っ赤にして俯き気味で
どこか儚げにでも熱の篭った瞳に私を映す理佐はもう居ない
でも、それはきっと私のせい
理佐から与えられる愛を当たり前だと
理佐は私をずっと見ててくれる、なんて自惚れていたせいだ
『ねる』
「ねる」
同じ人に呼ばれてるはずなのに
まるで別人みたいだ
そう感じてしまうくらいに
数年ぶりにあった理佐は変わってしまっていた
「なに?」
「いや、間抜けな顔で暇そうにしてたから」
「ねぇ失礼なんですけど」
そう睨みつけても理佐は楽しげに笑うだけ
きっと昔だったら、私に間抜けな顔なんて言わないし
思っていても絶対言わない
何が彼女をこんなにも変えてしまったんだろう
「はぁ…」
「そんなため息ばっかついてると幸せ逃げるよ」
「飼い犬に噛まれるってこういうことか、」
「ねるおばさんみたい」
相変わらずケラケラと楽しそうに笑う姿に腹が立って
無視をすると
少し低い声で
「元々ねるの犬なんかじゃなかったよ。」
小さくボソッと呟いた
その顔は昔の理佐みたいに
どこか儚げで
なんでかその姿にキュッと胸が締め付けられた
「理佐」
「あ、由依
講義終わったの?」
「うん、理佐は今来たの?
ちゃんと朝起こしたじゃん」
「あー、あの後眠くて寝ちゃった」
今日も仲がよろしいことで。
……頼むから他所でやってくれ。
理佐の態度や接し方が変わっていたことには何も思わなかった
それなりに驚きはしたけど
キャラ変?アピールの仕方でも変えた?くらいにしか思わなかった
でも、まさか
私以外の人に好意を寄せて
お付き合いまでしてるなんて思ってもみなかった。
「由依可愛い」
『ねる可愛い』
恋人を愛おしそうな顔で見つめる理佐が
数年前と重なる
あの熱い瞳で見つめられることも
愛おしそうに名前を呼ぶこともしてくれない
今まで私のものだった全てを取られたような気分になって
黒くドロっとしたよく分からない感情が湧いてくる
私の理佐なのに
「っ…」
なに考えてんだろ。
これ以上2人をみていられなくて
広げていたノートと筆箱をカバンにしまって
「おじゃま虫は帰りまーす、」
いつもみたいに笑えてるだろうか
一生懸命口角を上げて
声を高くしてることがバレてないといいけど
チラッと理佐の方を見ると
なに?バイト?なんて呑気に言ってる
ねるでさえ気づかない小さな変化にも気づいてくれてたのに、
なにそれ。まるで理佐に気づいて欲しいみたいじゃん。
「理佐、なんかねる変じゃなかった?」
「さあ…?」
理佐の言葉でどっと感情が溢れてくる
わけわかんない。
なんでこんなに苦しいんだろ、
なんで泣けてくるんだろ、
これじゃまるで、
「理佐の事っ、すきみたいじゃんっ、」