いのかりん🦒🎐
今日はなんだか心が落ち着かない
そのせいか終盤まで来た本も文字を追うばかりで
内容が全く入ってこない
感動を誘う言葉が並べられていてるのに内容が入ってこないせいで
今まで読んできた時間を台無しにした気分だ
普段なら本を置いて別のことで暇を潰そうとするだろう
でも今日はそうはいかない
本から目を離してほか事をしようとすれば、
奴が待ってましたと言わんばかりにニコニコ笑顔で寄ってくるから
いつもならそれを嬉しいと素直に思うし
犬みたいな姿が愛らしくて頭を撫でてしまう
でも今日の私はそれを素直に喜ぶことが出来ない、
梨「ひかるはちっちゃくて可愛いなぁ」
ひ「嬉しくないんだけど」
梨「えー褒めてんねんで?」
保「いのりー女の子が呼んでるで?」
梨「え、また?最近多すぎ、」
ひ「バレンタインが近いからじゃない?」
梨「あ〜…バレンタインか、」
チラッと廊下の方を見ると
小柄で可愛いらしい女の子が顔を赤くしてたってる
ふわふわ系ってやつか…
男の子はああいう子が好きなんだろうな、
梨名もああいう子の方が好きなのかな、
本に目線を戻すと
梨名が行ってくるわって女の子の所へ
めんどくさいなら行かなければいいのに。
なんでそんなに優しくするんだろう。
体の奥からよく分からない感情がふつふつと湧いてきて
苦しくなって、なんでか目頭が熱くなる
やっぱり今日はなんだか変だ
梨名が帰ってくる前に早退しよう。
きっと保健室の先生に頼めばカバンは持ってきてくれるだろうから
本だけしまって
誰にも話しかけられないようにひっそりと保健室へ向かう
夏「失礼します、」
いつも居るはずの先生は居なくて
デスクに『職員室に居ます』と可愛いしいイラストと共に書いてあった
職員室か、
保健室からはそんなに離れてないし
なんならすぐそこなんだけど
中に入った時の注目される感じが苦手だった私は職員室へは行かず
勝手にベッドに寝転んだ
きっと先生が帰ってきたら怒られるだろう
でも、そんなの気にならないぐらいに
感情が溢れてきて、苦しくて仕方なかった。
布団に包まると少しばかり落ち着いたけど、
今頃…梨名はあの可愛い子と一緒なのか…
ちゃんと断ってくれたかな…
LINEとか交換してそう。
どうしても梨名のことばかり考えてしまって
せっかく落ち着いたのに、また感情が溢れてきて、
誰かに聞かれないように、枕に顔を埋めて枕を濡らす
夏「グスッ…梨名の…ばか…」
梨「誰がばかや」
夏「え。」
枕から顔を上げて声の聞こえた方に見ると、
梨名が困った顔をして立ってた
嘘、聞かれてた、
恥ずかしくて布団の中に逃げる
梨「あはは、でっかい蛹みたいやなぁ〜」
梨名が笑って布団ごと抱きしめてきた
夏「うぅっ、最悪やぁ〜っ…なんでいんねんっ」
梨「夏鈴が教室に居らへんかったから心配で、
昨日から様子おかしかったから保健室かなーって」
夏「よく分かったね、保健室って、」
梨「そりゃ、彼氏ですから、」
彼氏という言葉がちょっとくすぐったい
でも、梨名が私のことを気にしてくれていたのが嬉しくて
梨名の顔が見たくなって、少しだけ顔を出す
照れてるのかなと思ってたけど
照れるどころか凄い落ち込んだ顔をしていて心配になるけど
その姿が子犬みたいで愛らしくて、
頬に手を添える撫でてあげるとぎゅっと抱きしめられ擦り寄ってきた
うん、やっぱり子犬みたい、
抵抗せず素直に背中に腕を回す
梨「ごめんな、」
夏「…なんで謝るの?」
梨「…夏鈴のこと、気づいてたのに…
もしかしたら、嫉妬してくれるかもって、」
夏「…うん」
梨「もしかしたら、ちょっと素直に…なってくれるかも、って」
夏「うん、」
梨「でも。泣かせちゃった、
彼氏失格やんな…ごめん、」
こんな弱々しい梨名初めて見た、
と思うのと同時に
いつもリードしてもらってばかりで
素直になれない私に気を使わせてばかりだったと反省する
何も言わないのを怒ったと勘違いしたのか
離れようとするから
ぎゅっと強めに抱きしめる
夏「したよ……嫉妬、」
梨「え、」
夏「律儀に一人一人会いに行くから…ムカついたし…
めんどくさいなら相手にしなければいいのにって…
それに……皆、私なんかより…女の子っぽくて、可愛いし
私が梨名の彼女でいいのかな、って不安になって泣けてきて
こんな泣いてるときも別の子と一緒なんだって思ったら
もっと泣けてきて、
色んな感情が溢れてきて、
こんなにも梨名のこと好きだったんだって、苦しくなった。」
梨「…」
夏「…何か言ってよ、恥ずかしいじゃん、///」
梨「あ、ごめんっ、可愛いすぎてフリーズしてたっ」
夏「なにそれ…意味わかんない///」
恥ずかしくなって梨名の首に顔を埋めると
そっかそっか〜そんなに想ってくれてたのかぁ〜
って嬉しそうに頭を撫でてくる
普段ならうるさいって文句を言うけど
1度素直になるとスイッチが入ったみたいに甘えたくなる
夏「…他の子によそ見しないで」
梨「してへん、これからは呼ばれても行かん」
夏「ん…好き。」
梨「…俺も好きだよ、」
夏「……ちゅー…したい。」
梨「っ…」
夏「ンッ…ふふっ…もう1回」
梨「〜っ…あかん、理性飛びそう、勘弁して///」
夏「ふふっ真っ赤や」
顔を真っ赤にしてぎゅっと抱きついてくる梨名に腕を回して
たまには素直になるのもいいかも、
そしたらまた顔を真っ赤にして照れるのかな
その時は大人しく抱きしめられてあげよう、