土生家
俺の弟は
梨名「兄ちゃん、兄ちゃん」
有美「…ん…なに…」
梨名「えいっ」
バッシャン!
有美「うわぁ?!つめたっ!!」
梨名「あははっ、ストライクやー!」
毎日と言っていいくらいウザ絡みしてくる
有美「……こんの、」
梨名「あはっ、ちょ、冷たいって!やめろやぁ〜!」
美波「こら!朝からなにしとんねん!
パパ今リモート会議中って言ったやろ!!」
梨名「じゃれてた」
有美「梨名に水風船投げられたからやり返してた」
美波「水風船って…小学生じゃないんやから…
もお〜…床めっちゃ濡れてるやんか、」
しかも、なんでか高校まで一緒、
有美「ん、ご馳走様。もう行くわ」
美波「はーい、忘れ物はない?」
有美「大丈夫だよ」
美波「弁当は?持ったー?」
有美「持った持った、じゃいってきまーす」
梨名「あ!兄ちゃん!忘れ物してんで!ほら!」
有美「ああ、ありがとう」
玄関で靴を履いてると
梨名が忘れ物を持ってきてくれたらしく
素直にお礼を言って手を出すと
梨名「はいっ」
出していた手を握って
梨名「忘れ物は俺やでっ!」
有美「…チッ…うっざっ」
梨名「あははっ、めっちゃ嫌そうな顔しとる」
美波「もういつまで言い合ってんねん
ほらはよ学校行きや」
梨名「はーい、兄ちゃん一緒行こ!」
有美「はいはい」
まあ、別に学校が一緒とか
登校、下校が一緒なのは別にいいんだけど、
梨名「あ!まつりや!おはよー!」
梨名「お、ちゅけもん!」
梨名「ん?なんか下駄箱に手紙入っててんけどー」
梨名「あ!兄ちゃん!あの子可愛い!」
梨名は父に似てタラシなのだ。
可愛い子が居れば話しかけに行くし
スポーツも勉強も出来て
しかも、音楽の才能まで
そんな完璧くんがモテないわけがなく
そのせいで必然と自分も目立ってしまう
俺は静かに学校生活を過ごしたいのに、
有美「はぁ〜っ…」
保乃「朝からでっかいため息やね
幸せ逃げちゃうで?」
有美「それ梨名にも言われた
そしたら俺の幸せわけてあげるー!ってウザ絡みされたよ」
保乃「うわぁ、相変わらず仲良いねぇ」
有美「いや、仲良いとかじゃないから」
保乃「でた、それいっつも言うよな
本当は嬉しいくせに〜
意外とブラコンなの保乃は知ってんで?」
嬉しいわけが無い
1週間一緒に居てみたら分かるよ
って言おうとしたところで先生が来てしまったので
言い返すことが出来きず会話が終わる
眠たい授業をなんとか耐え抜いて
やっと下校時間に
先生から軽い注意事項と報告を聞いて
廊下へ出る
あれ、
いつもなら携帯をいじりながらに壁に寄りかかってて
俺を見つけた瞬間に帰ろー!って言ってくるのに
梨名の姿すらない
まあ、友達と遊びにでも行ったんだろう
あまり気にとめずに
1人で帰れるなんてラッキーって少しウキウキした気分で帰る
有美「ただいまー」
いつもなら聞こえる母の声がないし
玄関には梨名の靴だけしかなくて
有美「父さんとデートか、」
何かお土産買ってきてもらおうかなーって考えながら自分の部屋に入ると
制服のままで俺のベッドにうつ伏せ寝っ転がる梨名が、
有美「お前なぁ、」
梨名「にぃ、ちゃん…」
いつもみたいに
どけやって頭をひっぱたこうとしたけど
俺が帰ってきたのに気づいて顔上げた梨名が何故か泣いてて、
有美「え、梨名…?」
梨名「グスッ…」
俺のベッドに体操座りをして
顔を隠すように縮こまって泣く姿が昔のまんまで
こうやって泣くのを見るのは随分と久しぶりなことで
だからこそ、
何があったんだろう、気になるけど
落ち着くまで待ってやろう、
確か泣いてる時…母さんが、
有美「ちょっと待ってろ」
部屋を出て冷蔵庫を確認する
なんでこういう時に限ってないんだよ、
いつもストックしてあるお目当てのものがタイミング悪く無くて
めんどくさいなって思いながら
近くのコンビニまで走る
有美「ん、」
梨名「グスッ…なに、?」
有美「…オレンジジュース、
ほら、愚図って泣き止まない時によく母さんが飲ませてたの思い出して、」
梨名「…」
有美「何があったかは知らないけどさ、
元気…だせよ…言いたくなるまで、兄ちゃん待ってやるから」
梨名「うぅっ、…」
有美「ん。」
パックにストローを刺して手渡すと
両手で持って飲み始めた
まだ完全には泣き止んでないけど
少し落ち着いたみたいでほっとして背中をさすってやると
梨「兄ちゃん…ありがとう。」
俯きながら照れくさそうに言う姿におもわず可愛いと思ってしまった
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保乃「え、で?何で泣いてたん?」
有美「好きな子にチャラい人は嫌って言われたんだって」
保乃「え、それだけ?」
有美「うん、だから速攻で部屋から出した」
保乃「あはは…w
でも、泣くって相当その子のこと好きなんやな」
有美「みたいだよ、
だから最近はその子に振り向いてもらいたくて
めっちゃ頑張ってるらしくて学校で絡んでこないから
すんげえ嬉しい」
保乃「とか言って本当は寂しいくせに〜」
有美「マジで、そんなことないから」
梨名「兄ちゃん!!」
保乃「お、噂をすれば」
有美「はぁ、はいはい、なんだよ」
梨名「夏鈴ちゃんにすっげぇ無視される…!」
有美「はい。さようなら」
梨名「ちょ!待って!」
有美「1回自分のしてること相手の立場になって考えてみろよ」
梨名「夏鈴ちゃんの立場になってか、、、なるほど…」
保乃「なんだかんだでちゃんと相談に乗ってるあたり
やっぱりブラコンやなぁ〜」