Genius10
【1時3分】
正月は基本ゴロゴロして過ごすのが通例だ。
朝からお節とお雑煮を食べて、正月の特番見て、溜めてた雑誌を読み漁って気付いたら寝落ちしている。
でも今年はちょっとやる気が出ているのでランニングと素振りだけはやった。
そして体を動かせば眠くなるのは仕方ない。
あったかい風呂に入ってウトウトしていた俺はベッドに突っ伏して眠ってしまっていた。
「…なんや」
ふと頭の上からポコポコと鳴る電子音で目が覚めた。
気付けば日付が変わり1月3日。俺の誕生日だ。
眠い目を擦りながらスマホを開くと、クラスメイトや友達連中からおめでとうのメッセージが届いていた。
みんな日付が変わると同時に送ってくれたらしい。
ありがたくメッセージを読みひとつひとつ返信しながら、ふと気付いた。
「あの子から…来ぉへんな」
あの子とはもちろん、意中の彼女である。
確かに0時ちょうどに送ってくるような性格ではないが、これだけ連絡が来る中彼女から来ないのはやはり寂しい。
もしかしたらもう寝てしまっているのかもしれない。
明日起きたら連絡が入っているかもしれないと自分に言い聞かせ、やっと落ち着いたチャットを閉じて頭から布団を被った。
…寝れない。
出遅れた数人からちょこちょこメッセージが来るのに返信しているせいもあるが、彼女と知り合って初めての誕生日、やっぱり祝ってほしい。
こっちから連絡してみるか…いや、催促してるみたいで嫌だ。
そもそも寝てるかもしれないのだ。送って返事がなかったら悲しすぎる。
「欲張りやな…」
あんまり物に執着ない方だと思っていたのに、彼女に会ってからは彼女の行動ひとつひとつに一喜一憂してばかりだ。
年上としてもっとしっかりしなければあの子を守ることなんて出来ないというのに。
徐々にズレてくる布団を再度頭から被ったところで、またポコンと通知が鳴った。
これを返したら本気で寝ようとスマホを見た瞬間、自分でも驚くスピードで起き上がった。
「来た!!!」
毛利先輩、お誕生日おめでとうございます!
0時はお友達からたくさん連絡が来てると思うのでこの時間に送りました。
起こしてしまったらごめんなさい。
先輩にとって素敵な1年になりますように。
この時間、の文字に送信時間を見ると01:03と書かれている。
1月3日の1時3分…何これめっちゃオシャレやん。
しかも友達から連絡来るの見越して時間差で送ったってこと?
「アカン、やっぱ見ずに寝るべきやった…」
無意識に上がっていく口角を止めることが出来ない。
俺のためにこの時間まで起きててくれたことも、送ってくれた文章も全部が愛おしくて胸がいっぱいになる。
お祝いありがとう。もう寝る?ちょっとだけ電話してもええ?
気付けばそんなメッセージを送ってしまったがすぐ既読がついた。
そして電話が鳴る。
『お誕生日おめでとうございます、先輩』
電話口の声に涙まで込み上げてきた。
今すぐにでも会いに行きたいのを必死に堪えつつ他愛ない会話を何度か繰り返してから、ちょっと息を整える。
「まだ初詣行ってへんのやけど、良かったら明日…いや今日か、一緒に行かへん?」
『私もまだだったんですよ。ご一緒して良いんですか?ご家族やお友達は…』
「いや、その…二人で」
『二人でですか?…贅沢な初詣ですね』
「贅沢?」
『本日の主役を独り占め出来るんです。贅沢じゃないですか』
「!!!」
この子は俺を喜ばせるのが本当に上手い。
欲しい言葉を全部くれる。
こんな彼女の隣に立てるよう、もっと努力しなければと改めて決意したのだった。
そこそこ気合いを入れた俺の目の前に着物を来た彼女が現れ膝から崩れ落ちたのは数時間後の話。
正月は基本ゴロゴロして過ごすのが通例だ。
朝からお節とお雑煮を食べて、正月の特番見て、溜めてた雑誌を読み漁って気付いたら寝落ちしている。
でも今年はちょっとやる気が出ているのでランニングと素振りだけはやった。
そして体を動かせば眠くなるのは仕方ない。
あったかい風呂に入ってウトウトしていた俺はベッドに突っ伏して眠ってしまっていた。
「…なんや」
ふと頭の上からポコポコと鳴る電子音で目が覚めた。
気付けば日付が変わり1月3日。俺の誕生日だ。
眠い目を擦りながらスマホを開くと、クラスメイトや友達連中からおめでとうのメッセージが届いていた。
みんな日付が変わると同時に送ってくれたらしい。
ありがたくメッセージを読みひとつひとつ返信しながら、ふと気付いた。
「あの子から…来ぉへんな」
あの子とはもちろん、意中の彼女である。
確かに0時ちょうどに送ってくるような性格ではないが、これだけ連絡が来る中彼女から来ないのはやはり寂しい。
もしかしたらもう寝てしまっているのかもしれない。
明日起きたら連絡が入っているかもしれないと自分に言い聞かせ、やっと落ち着いたチャットを閉じて頭から布団を被った。
…寝れない。
出遅れた数人からちょこちょこメッセージが来るのに返信しているせいもあるが、彼女と知り合って初めての誕生日、やっぱり祝ってほしい。
こっちから連絡してみるか…いや、催促してるみたいで嫌だ。
そもそも寝てるかもしれないのだ。送って返事がなかったら悲しすぎる。
「欲張りやな…」
あんまり物に執着ない方だと思っていたのに、彼女に会ってからは彼女の行動ひとつひとつに一喜一憂してばかりだ。
年上としてもっとしっかりしなければあの子を守ることなんて出来ないというのに。
徐々にズレてくる布団を再度頭から被ったところで、またポコンと通知が鳴った。
これを返したら本気で寝ようとスマホを見た瞬間、自分でも驚くスピードで起き上がった。
「来た!!!」
毛利先輩、お誕生日おめでとうございます!
0時はお友達からたくさん連絡が来てると思うのでこの時間に送りました。
起こしてしまったらごめんなさい。
先輩にとって素敵な1年になりますように。
この時間、の文字に送信時間を見ると01:03と書かれている。
1月3日の1時3分…何これめっちゃオシャレやん。
しかも友達から連絡来るの見越して時間差で送ったってこと?
「アカン、やっぱ見ずに寝るべきやった…」
無意識に上がっていく口角を止めることが出来ない。
俺のためにこの時間まで起きててくれたことも、送ってくれた文章も全部が愛おしくて胸がいっぱいになる。
お祝いありがとう。もう寝る?ちょっとだけ電話してもええ?
気付けばそんなメッセージを送ってしまったがすぐ既読がついた。
そして電話が鳴る。
『お誕生日おめでとうございます、先輩』
電話口の声に涙まで込み上げてきた。
今すぐにでも会いに行きたいのを必死に堪えつつ他愛ない会話を何度か繰り返してから、ちょっと息を整える。
「まだ初詣行ってへんのやけど、良かったら明日…いや今日か、一緒に行かへん?」
『私もまだだったんですよ。ご一緒して良いんですか?ご家族やお友達は…』
「いや、その…二人で」
『二人でですか?…贅沢な初詣ですね』
「贅沢?」
『本日の主役を独り占め出来るんです。贅沢じゃないですか』
「!!!」
この子は俺を喜ばせるのが本当に上手い。
欲しい言葉を全部くれる。
こんな彼女の隣に立てるよう、もっと努力しなければと改めて決意したのだった。
そこそこ気合いを入れた俺の目の前に着物を来た彼女が現れ膝から崩れ落ちたのは数時間後の話。