Genius10
【謎の相槌】
スッと通った鼻筋に柔らかそうな桜色の唇、日本人にしては彫りの深い目元には白玉みたいな肌に影が出来るほど長いまつ毛。
『美人は三日で飽きる』なんて言うけど、横顔だけでも何度見ても飽きない。
あわよくば触ってみたいが今は邪魔をしてはいけないので我慢する。
「先輩、こんな感じで良いですか?」
「うーん、もうちょい張った方がええと思うわ。すぐたわんでまうで」
「なるほど」
今は彼女のラケットのメンテナンス中。
何年も日常的にメンテしている俺たちとは違い、まだ始めたばかりの彼女には補助が必要なのだ。
決して個人的に一緒にいたいからではない。
…嘘ですごめんなさい。
「ふらー。やー、また先輩んかい迷惑かきとーが」
(こら、君また先輩に迷惑かけてるんですか)
メンテナンスが終盤に差し掛かった頃、中学生が一人聞き慣れない言葉を発しながら近付いてきた。
日本語、か?
「ぬーがよ。迷惑なっくぇーかきてーねーんさぁ」
(何がよ。迷惑なんかかけてないし)
「メンテナンスぐれーちゅいっしないるはじ」
(メンテナンスくらい一人で出来るでしょう)
「であるわけよ」
「…甘てーねーんっしちゅいっししぇー」
(甘えてないで一人でやりなさいよ)
「だからよー」
「…はぁ」
「………」
え、終わり!?だからよーって言うなら続きないんか!?
てかこの子普通に会話してるけど、何語?
何話してたか全然分からんかった…。
一人で困惑する俺に頭を抱えた彼女の会話相手───木手が申し訳なさそうに振り返った。
「すいませんね、この子貴方に甘えてばっかりで」
「え!?いや、ええんやで」
「永四郎はアンマーよりアンマーやっさ」
(永四郎はお母さんよりお母さんだよね)
「カシマサン!!」
(やかましい!!)
…永四郎!?
な、なんで下の名前で呼んでるん!俺も呼ばれたことないのに!!
てか何事もなかったみたいに黙々とガット張ってるけどちょっと止めてほしい。
「そもそも今何話してたん?」
「ああすみません、沖縄弁 で話してしまってましたね。メンテナンスくらい先輩に見てもらわなくても一人で出来るでしょうと言ったんです。昔から私のラケット弄くり回してたんですから」
昔から!!!???
何!?幼馴染み的なやつなん!?
そんなん知らん…合宿所に知り合いおるならなんで教えてくれへんの…。
しかも話し方からして普段からよく喋ってる仲やん!
一軍の先輩たちにも目光らせなアカンのにここに来て最大のライバル出現か!?
内心床を転げ回る勢いで悶絶している俺を尻目に木手は彼女を叱り続けている。
主に合宿所での生活態度や人との接し方(俺のことが大半っぽい)のことなど。
よく見てるんだなぁと感心する。……いや感心してる場合じゃない。
これはあれか?俺と引き離して自分を頼ってもらおうって魂胆か!?
「大体やー は…ちょっと、聞いてるの?」
「だからよー」
「………」
またあのフレーズが出た。相槌みたいなもんか?
木手が呆れ返ってるし強制的に会話を終わらせる締めの言葉なのかもしれない。
観察していて思ったけど、彼女の視線はラケットから外れないし木手のことは特に何とも思ってなさそうである。
これは聞くしかない!
「二人は、その…幼馴染みか何かなん?」
「「え?」」
「いや、沖縄弁で会話できるくらいやし、木手のラケット昔から触ってたらしいし…仲ええんかなって」
「…言ってないんですか。てっきりもう知ってるものかと」
「そういえば言ってなかったかも」
何!?含み持たせるのやめて!!
この雰囲気、もしかして許嫁…!?
アカン、それはもう勝たれへん頼む違うって言って!!
「永四郎は私の従兄ですよ」
「………いとこ?」
「ええ、小学校に上がる前までは同じ家で暮らしてましてね」
「誕生日も一緒なのでよく腹違いの双子だなんて言われてセットにされてましたよ」
従兄かーーーー!!!!
親戚の線は盲点やった!!!良かった!!!!
めっちゃ色々妄想したの恥ずかしいけど口に出さんで良かった!!!!!
そういえばどことなく雰囲気が似ている気がする。
日本人にしては彫りの深い目元は沖縄の血が入ってるからか。ちょっと納得した。
それから少しして、彼女はガットとグリップテープが綺麗に張り直されたラケットを片付けに行った。
木手と二人の空間、なんか気まずい。
「あの子、テニスやっとったんやね」
「いえ、テニス自体はここで初めてやりましたが、私のラケットを勝手に分解してガットとグリップテープを張るのが趣味なんですよ」
「お、おう…」
「ちゃんと使えるように張るので咎めたことはありませんが…。なので先輩に見てもらわなくても出来るはずなんですよ。いつも面倒かけて本当にすみません」
「いやいや、俺もあの子といるの楽しいし気にしてへんで」
「それならいいんですが。最近は口を開けば毛利先輩、毛利先輩と貴方の話ばかりでしてね。よほど気に入ってるのでしょうがあまりに引っ付いて迷惑をかけているんじゃないかと心配で」
………俺の聞き間違いか?
あの子、俺のおらんとこで俺の話してんの?
しかも相手が『よほど気に入ってる』って感想持つくらいの話してんの?
え、自惚れてええやつ?
「その話、詳しく聞かせてもろてええやろか」
「はぁ。構いませんけど」
彼女が帰ってくるまでの短い間やったけど、木手の話を聞いた俺の顔はたわんだガットよりゆるっゆるやったと思う。
「やっと帰って来ましたね。ラケット片付けるのにいつまでかかってるの」
「だからよー」
「結局何なんそれ」
「沖縄人 がよく使う相槌ですよ。この子は話聞いてないとき大体あれです」
「じゃあ木手の話全然聞いてへんやん」
「だからよー」
(そうですね)
「良いんです、いつものことなので…」
※沖縄弁は翻訳サイトからコピペしたので、おかしいところはご容赦ください。
スッと通った鼻筋に柔らかそうな桜色の唇、日本人にしては彫りの深い目元には白玉みたいな肌に影が出来るほど長いまつ毛。
『美人は三日で飽きる』なんて言うけど、横顔だけでも何度見ても飽きない。
あわよくば触ってみたいが今は邪魔をしてはいけないので我慢する。
「先輩、こんな感じで良いですか?」
「うーん、もうちょい張った方がええと思うわ。すぐたわんでまうで」
「なるほど」
今は彼女のラケットのメンテナンス中。
何年も日常的にメンテしている俺たちとは違い、まだ始めたばかりの彼女には補助が必要なのだ。
決して個人的に一緒にいたいからではない。
…嘘ですごめんなさい。
「ふらー。やー、また先輩んかい迷惑かきとーが」
(こら、君また先輩に迷惑かけてるんですか)
メンテナンスが終盤に差し掛かった頃、中学生が一人聞き慣れない言葉を発しながら近付いてきた。
日本語、か?
「ぬーがよ。迷惑なっくぇーかきてーねーんさぁ」
(何がよ。迷惑なんかかけてないし)
「メンテナンスぐれーちゅいっしないるはじ」
(メンテナンスくらい一人で出来るでしょう)
「であるわけよ」
「…甘てーねーんっしちゅいっししぇー」
(甘えてないで一人でやりなさいよ)
「だからよー」
「…はぁ」
「………」
え、終わり!?だからよーって言うなら続きないんか!?
てかこの子普通に会話してるけど、何語?
何話してたか全然分からんかった…。
一人で困惑する俺に頭を抱えた彼女の会話相手───木手が申し訳なさそうに振り返った。
「すいませんね、この子貴方に甘えてばっかりで」
「え!?いや、ええんやで」
「永四郎はアンマーよりアンマーやっさ」
(永四郎はお母さんよりお母さんだよね)
「カシマサン!!」
(やかましい!!)
…永四郎!?
な、なんで下の名前で呼んでるん!俺も呼ばれたことないのに!!
てか何事もなかったみたいに黙々とガット張ってるけどちょっと止めてほしい。
「そもそも今何話してたん?」
「ああすみません、
昔から!!!???
何!?幼馴染み的なやつなん!?
そんなん知らん…合宿所に知り合いおるならなんで教えてくれへんの…。
しかも話し方からして普段からよく喋ってる仲やん!
一軍の先輩たちにも目光らせなアカンのにここに来て最大のライバル出現か!?
内心床を転げ回る勢いで悶絶している俺を尻目に木手は彼女を叱り続けている。
主に合宿所での生活態度や人との接し方(俺のことが大半っぽい)のことなど。
よく見てるんだなぁと感心する。……いや感心してる場合じゃない。
これはあれか?俺と引き離して自分を頼ってもらおうって魂胆か!?
「大体
「だからよー」
「………」
またあのフレーズが出た。相槌みたいなもんか?
木手が呆れ返ってるし強制的に会話を終わらせる締めの言葉なのかもしれない。
観察していて思ったけど、彼女の視線はラケットから外れないし木手のことは特に何とも思ってなさそうである。
これは聞くしかない!
「二人は、その…幼馴染みか何かなん?」
「「え?」」
「いや、沖縄弁で会話できるくらいやし、木手のラケット昔から触ってたらしいし…仲ええんかなって」
「…言ってないんですか。てっきりもう知ってるものかと」
「そういえば言ってなかったかも」
何!?含み持たせるのやめて!!
この雰囲気、もしかして許嫁…!?
アカン、それはもう勝たれへん頼む違うって言って!!
「永四郎は私の従兄ですよ」
「………いとこ?」
「ええ、小学校に上がる前までは同じ家で暮らしてましてね」
「誕生日も一緒なのでよく腹違いの双子だなんて言われてセットにされてましたよ」
従兄かーーーー!!!!
親戚の線は盲点やった!!!良かった!!!!
めっちゃ色々妄想したの恥ずかしいけど口に出さんで良かった!!!!!
そういえばどことなく雰囲気が似ている気がする。
日本人にしては彫りの深い目元は沖縄の血が入ってるからか。ちょっと納得した。
それから少しして、彼女はガットとグリップテープが綺麗に張り直されたラケットを片付けに行った。
木手と二人の空間、なんか気まずい。
「あの子、テニスやっとったんやね」
「いえ、テニス自体はここで初めてやりましたが、私のラケットを勝手に分解してガットとグリップテープを張るのが趣味なんですよ」
「お、おう…」
「ちゃんと使えるように張るので咎めたことはありませんが…。なので先輩に見てもらわなくても出来るはずなんですよ。いつも面倒かけて本当にすみません」
「いやいや、俺もあの子といるの楽しいし気にしてへんで」
「それならいいんですが。最近は口を開けば毛利先輩、毛利先輩と貴方の話ばかりでしてね。よほど気に入ってるのでしょうがあまりに引っ付いて迷惑をかけているんじゃないかと心配で」
………俺の聞き間違いか?
あの子、俺のおらんとこで俺の話してんの?
しかも相手が『よほど気に入ってる』って感想持つくらいの話してんの?
え、自惚れてええやつ?
「その話、詳しく聞かせてもろてええやろか」
「はぁ。構いませんけど」
彼女が帰ってくるまでの短い間やったけど、木手の話を聞いた俺の顔はたわんだガットよりゆるっゆるやったと思う。
「やっと帰って来ましたね。ラケット片付けるのにいつまでかかってるの」
「だからよー」
「結局何なんそれ」
「
「じゃあ木手の話全然聞いてへんやん」
「だからよー」
(そうですね)
「良いんです、いつものことなので…」
※沖縄弁は翻訳サイトからコピペしたので、おかしいところはご容赦ください。