Genius10
【距離感】
「ちゃーい☆おはようさん!」
「種ヶ島先輩、おはようございます」
「………」
朝。意中の彼女に一番に挨拶したくてスタンバってたのに種ヶ島さんにサラッと取られてしまった。
しかも肩に腕回してるし顔同士の距離も近い。
…別に羨ましくなんてないけど。
「毛利先輩もおはようございます」
「おっ…おはようさん!」
「はは、寿三郎は今日も元気やな☆」
「…おはようございます」
向こうから挨拶してくれてちょっと回復したテンションは、種ヶ島さんが腕の力を強めたことにより一瞬でしぼんだ。
もうほっぺたくっついてるやん、と口から出かけて飲み込む。
「先輩、痛いです」
「あらら堪忍な。さて朝飯食べて来よかな」
全然悪びれてない顔でようやく彼女を解放した種ヶ島さんは意味ありげな笑顔をこっちに向けて食堂に行ってしまった。
やっと二人きりになれたのに何故だか取り残されたような気がして微妙な空気が漂う。
「こんなとこで何してんだ」
「二人ともおはよう」
そこに微妙な空気を察したのか怪訝そうな表情の大曲さんと営業スマイルの君島 さんがやってきた。
「「おはようございます」」
「何かあったのか?」
「いえ、さっきまで種ヶ島先輩がいらっしゃっただけです」
「あぁ」
妙に納得した大曲さんが彼女の頭をポンポンと二回触る。
…なんでそんなスマートに出来るんやろ。
「アイツに何かされたらすぐ言えよ。シメといてやるし」
「特に何かされた訳では」
「周りを頼るのは大事ですよ。君の騎士 は少々頼りないようですから」
君島 さんがこっちを見ながら「ね?」と言ってきた。
そんな返答に困ること言わないでほしい。
当の彼女は聞こえなかったのか理解できなかったのか小首を傾げるだけでノーコメントやし。
…かわいいからエエけど。
その後少し話すと二人も朝食に向かってしまった。
ていうかこの流れ、俺も頭撫でるくらいなら許されるのでは?
「俺たちも朝飯行こか」からの頭ポンポン、なんならちょっと背中押してエスコートも…イケる!
「ほ、ほな俺たちも…」
「おいテメェら何ボサッとしてんだ!早く朝飯食いに行かねぇと処刑しちまうぞ!」
「いだっ!」
最悪のタイミングで遠野さんが来た。
そして彼女の背中を思いっきり叩いて通り過ぎていった。
呆然として遠野さんを目で追うと、食堂の入り口で眉間を指で押さえている君島 さんがいた。
大曲さんと種ヶ島さんも横で苦笑してる。
何なん今日…。
「大丈夫か?」
「あ、はい。何とか…越知先輩、おはようございます」
近くで声がして視線を戻すと、彼女の背を擦っている月光 さんがいた。
もう泣きそう。なんでこんなにタイミング悪いんや。
ほんの、ほんのちょっとだけ優越感に浸ることも許されへんのやろか。
嫉妬と羞恥に歪んだ顔を見られたくなくて二人に背を向けた。
もう朝食どころじゃない。部屋に帰ろう。
しかし二、三歩進んだところで左手を捕まれた。
「毛利先輩、どうしたんですか」
斜め下から声がして振り向くと俺の左手を両手で握っている彼女がいた。
突然のことに処理が追い付かず、みるみる赤くなる顔をどう隠せば良いのかも思い付かない。
「食堂はあっちですよ。…具合悪いんですか?」
「いや…そういう訳や、ないんやけど」
「そうですか?じゃあほら行きましょう。食べそびれちゃいますよ」
「………せやな。行こか!」
俺の心情を知ってか知らずかグイグイ手を引っ張る彼女の笑顔が眩しすぎて、なんかもうどうでも良くなった。
「あっぶなー!何とか『スキンシップ大作戦』結果オーライやな☆」
「最初の種ヶ島さんのスキンシップが激しくて二人ともちょっと引いてましたよ」
「あれ、ホンマ?」
「そこから大曲君と私で軌道修正したのに遠野君がぶち壊すから焦りましたよ」
「俺が悪いってのかぁ?」
「タイミング最悪だったし…。ま、トドメ刺したのは越知だけどよ」
「さして興味はない。それにちゃんと引き留めろと言った」
「次は寸劇でもやってもっとドラマチックにしてみるかい?」
「止めとけ入江。毛利が卒倒しかねねぇぞ」
二人が仲良く朝食を食べる様子を見ながら、次はどうやって毛利からスキンシップをさせるか考える優しい先輩たちの姿があったとかなかったとか。
「ちゃーい☆おはようさん!」
「種ヶ島先輩、おはようございます」
「………」
朝。意中の彼女に一番に挨拶したくてスタンバってたのに種ヶ島さんにサラッと取られてしまった。
しかも肩に腕回してるし顔同士の距離も近い。
…別に羨ましくなんてないけど。
「毛利先輩もおはようございます」
「おっ…おはようさん!」
「はは、寿三郎は今日も元気やな☆」
「…おはようございます」
向こうから挨拶してくれてちょっと回復したテンションは、種ヶ島さんが腕の力を強めたことにより一瞬でしぼんだ。
もうほっぺたくっついてるやん、と口から出かけて飲み込む。
「先輩、痛いです」
「あらら堪忍な。さて朝飯食べて来よかな」
全然悪びれてない顔でようやく彼女を解放した種ヶ島さんは意味ありげな笑顔をこっちに向けて食堂に行ってしまった。
やっと二人きりになれたのに何故だか取り残されたような気がして微妙な空気が漂う。
「こんなとこで何してんだ」
「二人ともおはよう」
そこに微妙な空気を察したのか怪訝そうな表情の大曲さんと営業スマイルの
「「おはようございます」」
「何かあったのか?」
「いえ、さっきまで種ヶ島先輩がいらっしゃっただけです」
「あぁ」
妙に納得した大曲さんが彼女の頭をポンポンと二回触る。
…なんでそんなスマートに出来るんやろ。
「アイツに何かされたらすぐ言えよ。シメといてやるし」
「特に何かされた訳では」
「周りを頼るのは大事ですよ。君の
そんな返答に困ること言わないでほしい。
当の彼女は聞こえなかったのか理解できなかったのか小首を傾げるだけでノーコメントやし。
…かわいいからエエけど。
その後少し話すと二人も朝食に向かってしまった。
ていうかこの流れ、俺も頭撫でるくらいなら許されるのでは?
「俺たちも朝飯行こか」からの頭ポンポン、なんならちょっと背中押してエスコートも…イケる!
「ほ、ほな俺たちも…」
「おいテメェら何ボサッとしてんだ!早く朝飯食いに行かねぇと処刑しちまうぞ!」
「いだっ!」
最悪のタイミングで遠野さんが来た。
そして彼女の背中を思いっきり叩いて通り過ぎていった。
呆然として遠野さんを目で追うと、食堂の入り口で眉間を指で押さえている
大曲さんと種ヶ島さんも横で苦笑してる。
何なん今日…。
「大丈夫か?」
「あ、はい。何とか…越知先輩、おはようございます」
近くで声がして視線を戻すと、彼女の背を擦っている
もう泣きそう。なんでこんなにタイミング悪いんや。
ほんの、ほんのちょっとだけ優越感に浸ることも許されへんのやろか。
嫉妬と羞恥に歪んだ顔を見られたくなくて二人に背を向けた。
もう朝食どころじゃない。部屋に帰ろう。
しかし二、三歩進んだところで左手を捕まれた。
「毛利先輩、どうしたんですか」
斜め下から声がして振り向くと俺の左手を両手で握っている彼女がいた。
突然のことに処理が追い付かず、みるみる赤くなる顔をどう隠せば良いのかも思い付かない。
「食堂はあっちですよ。…具合悪いんですか?」
「いや…そういう訳や、ないんやけど」
「そうですか?じゃあほら行きましょう。食べそびれちゃいますよ」
「………せやな。行こか!」
俺の心情を知ってか知らずかグイグイ手を引っ張る彼女の笑顔が眩しすぎて、なんかもうどうでも良くなった。
「あっぶなー!何とか『スキンシップ大作戦』結果オーライやな☆」
「最初の種ヶ島さんのスキンシップが激しくて二人ともちょっと引いてましたよ」
「あれ、ホンマ?」
「そこから大曲君と私で軌道修正したのに遠野君がぶち壊すから焦りましたよ」
「俺が悪いってのかぁ?」
「タイミング最悪だったし…。ま、トドメ刺したのは越知だけどよ」
「さして興味はない。それにちゃんと引き留めろと言った」
「次は寸劇でもやってもっとドラマチックにしてみるかい?」
「止めとけ入江。毛利が卒倒しかねねぇぞ」
二人が仲良く朝食を食べる様子を見ながら、次はどうやって毛利からスキンシップをさせるか考える優しい先輩たちの姿があったとかなかったとか。