Genius10

【決意表明】

関東大会の一回戦で負け、その時に負った手首の捻挫を治療した病院で幸村のリハビリする姿を見て、サボり癖を直し勝つために努力し出した。
そんな俺を面白くないと思う連中がいるのは予想がついていた。

しかし、分かってはいても彼らからの冷ややかな視線は思っていたよりも深く突き刺さり、俺の決意を壊しにかかる。
やっぱり努力なんてしない方がいいのか、テニスなんて辞めるべきかと後ろ向きなことを考えさせられる。

柄にもなく悩んでいた俺に、人生で初めてパピコを食べたという彼女が分けるのに苦戦して伸びた輪っかをもてあそびながら事も無げに聞いた。



「先輩はテニスが好きですか?」



何の裏もないただただ純粋な質問にしばし考えた後、首をゆっくり縦に振る。
練習が嫌いなだけで、ボールを追いかけるあの感じ自体は嫌いじゃない。



「それなら周りの目を気にして辞める必要なんてありませんよ。せっかく好きなことをしているのに、周りのせいで辞めちゃうのって何か悔しいじゃないですか」

「………!」



彼女の言葉を聞いた瞬間、周りの視線で冷え切っていた心が火が付いたように暖かくなった。
俺の変化に気付いたのか柔らかい笑み浮かべる彼女が視界いっぱいに広がると、暖かいを通り越して顔が真っ赤になるほど暑い。
…一つ下の女の子に励まされた挙げ句、恋に落ちるとは我ながら情けない。



「ありがとう、元気出たわ。練習がんばるから今度の試合見に来てくれへん?」

「見に行って良いんですか?ふふ、じゃあ楽しみにしてますね」



こんな約束をしたからにはもうサボりなんて許されない。
負けるなんて言語道断。絶対優勝して格好良いところを見せる。
そしていつかこの子が悩んだときは側で励ましてやれるような人間になる。
微妙に溶けたパピコを吸いながら新たな決意をした。



好きなタイプ:(笑顔が)柔らかい子
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