Genius10
【ユニフォーム】
彼女の処遇については君島くんに一任するよ。
必要なものがあれば支給するからね。
「というのがコーチたちからの伝言です」
「いや良いのかよそれで」
「実際一緒に生活するのは僕たちだし、こちらに都合の良いようにって配慮してくれているんじゃないかな」
彼女が合宿所に来た翌日の練習後。
『関係者以外立ち入り禁止』のプレートが掲げられた扉の奥で、一軍メンバーが話し合いをしている。
もちろん俺も一軍なので関係者に含まれているのだが、話に加わりたいが入る隙間がなく困っている本日のゲストの隣を確保している。
何かあればいつでも手助け出来るように、なんて建前でぶっちゃけこの子の隣は誰にも渡したくない。
「部屋はどうする」
「一階の端に荷物置きになっている部屋があります。そこを整えましょう」
「風呂は?」
「トレーニングルームのシャワー室はあんま使うやついねぇしもう専用にするか」
「俺たちが練習してるときの扱いは?」
「コーチから彼女にもテニスをさせるようにと指示が来ていましてね…あなた、経験は?」
先輩たちがチラリと彼女を見る。
視線を向けられた彼女は急に話を振られ驚いたのか「はいっ!」と大きめの返事をした。
それに驚いて俺の肩も微妙に上下する。
まさかここに来てテニスをしろと指示が来るとは思わなかった。
ただでさえ見知らぬ土地に来てまだ困惑しているだろうに少しくらいゆっくり休ませてあげてほしい。
「経験はありませんが、実際に見たことはあります」
「ほう、それはいつ頃の話だい?」
「今年の秋の新人戦だから…えっと」
「へぇ、新人戦ね。中学の?高校の?」
「高校のです」
「ふぅんなるほど…それなら最近の話だね。数年前とかじゃなければ良いんだ」
やっと話に加われて嬉しいのか、彼女は先輩たちと楽しげに会話を始めた。
男ばかりで萎縮しているかとも思ったけど問題なさそうだ。
というか三津谷さんやデュークさんがやけにこっちに向かってニコニコしているのはなんでや。
…もしかして俺が新人戦見に来てほしいって誘ったこと感付かれとる?
「用具はどうすんだ?」
「ラケットは先日イベントで使用した備品があるからそれを使ってもらうとして」
「靴は流石に買わなきゃか。結構たけーぞ」
「お金ならあります」
「………そうか」
「あとはユニフォームとジャージですね」
そう言って近付いてきた君島 さんの手には白いジャージが乗っている。
何となく違和感を感じて自分のジャージを見る。
俺のは赤。あの子のは…赤じゃない。
なんで?俺らが、主に俺が面倒見るんやし赤でええやん!と脳内でシャウトする。
「後ほど試着してください。サイズは予想で持ってきてしまったので」
「分かりました。ありがとうございます」
そして彼女はそれを素直に受け取ってしまった。
まあ、来て早々ワガママを言うような子じゃないし…ジャージの色なんて気にしないか。
でも赤やったらお揃いになるのになぁ…。
いやいや付き合ってもないのに何お揃い意識しとんねん!
「お、白なら俺とお揃いやん☆」
「わっ」
俺の葛藤を粉々に粉砕する言葉が種ヶ島さんの口から出た。
てか何肩組んでんねん俺まだ手も握ったことないのに羨ま…落ち着け俺。
「そういえば種ヶ島先輩だけ白ジャージなんですね。他の方は赤なのに」
「そら俺がここのリーダーやからやで」
「さっきリーダーは平等院先輩と聞きましたが…」
「裏ボスみたいなもんや☆」
「裏ボス…?」
種ヶ島さんの独自理論に首を捻る彼女。
合宿のこと右も左も分からんのにテキトーなこと言わんといてほしい…。
後で飛行機苦手で海外遠征に行かんかったから白なんやでって訂正しとこ。
ん?…そういえば。
「ジャージ一組しかありませんやん。洗い替えどないするんですか」
「サイズが分かったら追加で支給しますよ」
「あ、そうですか」
「追加も白やろし、お揃いやなくて残念やったな☆」
種ヶ島さんのウインクがものすごく腹立たしいが我慢や寿三郎。
周りも微妙に微笑ましい空気になっててまるで俺がヤキモチ妬いてるみたいやん!その通りやけど!!
その空気を察したのか君島 さんが彼女に話し掛ける。
「あなたが希望するなら赤ジャージも支給しますよ」
「でも赤ジャージは海外遠征に行った限られた方のものですよね。流石に私が着るわけには…」
「木を隠すなら森の中と言いますし、この面子の中にいるなら赤も選択肢としてはありです。サイズが合えば在庫はあったはずですから遠慮はいりませんよ」
君島 さんに後光が差している。
この場面でその提案してくれるのは神以外の何者でもない。
彼女もそれなら、と赤ジャージを追加でもらう話になったようだ。
ということは、たまにお揃いになることがあるってこと…やんな?
「良かったな、毛利」
「ぅえ!?つ、月光 さん…」
「お揃いになれるぞ」
「いや、俺は…その」
「嬉しくないのか?」
「嬉しいですけど、えっと…」
まさかの月光 さんに背後から撃たれた。
月光 さんてもしかして天然か?
恥ずかしいから今ここでその話しないでほしいんやけど…。
彼女に聞かれでもしたら、と思ったが彼女がいない。どうやらジャージのサイズを確かめに行ったらしい。
聞かれなくてホッとしたのも束の間、ドアが開いて彼女が戻ってきた。流石着替えるのが早い。
…あれ?
「赤…?」
「はい。サイズ確認したら赤も在庫があったのでいただいて来ました」
「そ、そうなんや…よう似合ってるわ」
「ふふ、ありがとうございます。これでお揃いですね」
「……っ、せやな!」
微妙に肩幅が合わないせいで萌え袖になってる手で口元を隠しながら笑う彼女に庇護欲がこれでもかと沸いてきたので、俺が絶対に守ると心に決めたのだった。
「俺も赤もろてきた~☆」
「種ヶ島先輩も赤になったんですね」
「やっぱみんなとお揃いがええやん!」
「………」
(((あんま揶揄 ってやるなよ…)))
彼女の処遇については君島くんに一任するよ。
必要なものがあれば支給するからね。
「というのがコーチたちからの伝言です」
「いや良いのかよそれで」
「実際一緒に生活するのは僕たちだし、こちらに都合の良いようにって配慮してくれているんじゃないかな」
彼女が合宿所に来た翌日の練習後。
『関係者以外立ち入り禁止』のプレートが掲げられた扉の奥で、一軍メンバーが話し合いをしている。
もちろん俺も一軍なので関係者に含まれているのだが、話に加わりたいが入る隙間がなく困っている本日のゲストの隣を確保している。
何かあればいつでも手助け出来るように、なんて建前でぶっちゃけこの子の隣は誰にも渡したくない。
「部屋はどうする」
「一階の端に荷物置きになっている部屋があります。そこを整えましょう」
「風呂は?」
「トレーニングルームのシャワー室はあんま使うやついねぇしもう専用にするか」
「俺たちが練習してるときの扱いは?」
「コーチから彼女にもテニスをさせるようにと指示が来ていましてね…あなた、経験は?」
先輩たちがチラリと彼女を見る。
視線を向けられた彼女は急に話を振られ驚いたのか「はいっ!」と大きめの返事をした。
それに驚いて俺の肩も微妙に上下する。
まさかここに来てテニスをしろと指示が来るとは思わなかった。
ただでさえ見知らぬ土地に来てまだ困惑しているだろうに少しくらいゆっくり休ませてあげてほしい。
「経験はありませんが、実際に見たことはあります」
「ほう、それはいつ頃の話だい?」
「今年の秋の新人戦だから…えっと」
「へぇ、新人戦ね。中学の?高校の?」
「高校のです」
「ふぅんなるほど…それなら最近の話だね。数年前とかじゃなければ良いんだ」
やっと話に加われて嬉しいのか、彼女は先輩たちと楽しげに会話を始めた。
男ばかりで萎縮しているかとも思ったけど問題なさそうだ。
というか三津谷さんやデュークさんがやけにこっちに向かってニコニコしているのはなんでや。
…もしかして俺が新人戦見に来てほしいって誘ったこと感付かれとる?
「用具はどうすんだ?」
「ラケットは先日イベントで使用した備品があるからそれを使ってもらうとして」
「靴は流石に買わなきゃか。結構たけーぞ」
「お金ならあります」
「………そうか」
「あとはユニフォームとジャージですね」
そう言って近付いてきた
何となく違和感を感じて自分のジャージを見る。
俺のは赤。あの子のは…赤じゃない。
なんで?俺らが、主に俺が面倒見るんやし赤でええやん!と脳内でシャウトする。
「後ほど試着してください。サイズは予想で持ってきてしまったので」
「分かりました。ありがとうございます」
そして彼女はそれを素直に受け取ってしまった。
まあ、来て早々ワガママを言うような子じゃないし…ジャージの色なんて気にしないか。
でも赤やったらお揃いになるのになぁ…。
いやいや付き合ってもないのに何お揃い意識しとんねん!
「お、白なら俺とお揃いやん☆」
「わっ」
俺の葛藤を粉々に粉砕する言葉が種ヶ島さんの口から出た。
てか何肩組んでんねん俺まだ手も握ったことないのに羨ま…落ち着け俺。
「そういえば種ヶ島先輩だけ白ジャージなんですね。他の方は赤なのに」
「そら俺がここのリーダーやからやで」
「さっきリーダーは平等院先輩と聞きましたが…」
「裏ボスみたいなもんや☆」
「裏ボス…?」
種ヶ島さんの独自理論に首を捻る彼女。
合宿のこと右も左も分からんのにテキトーなこと言わんといてほしい…。
後で飛行機苦手で海外遠征に行かんかったから白なんやでって訂正しとこ。
ん?…そういえば。
「ジャージ一組しかありませんやん。洗い替えどないするんですか」
「サイズが分かったら追加で支給しますよ」
「あ、そうですか」
「追加も白やろし、お揃いやなくて残念やったな☆」
種ヶ島さんのウインクがものすごく腹立たしいが我慢や寿三郎。
周りも微妙に微笑ましい空気になっててまるで俺がヤキモチ妬いてるみたいやん!その通りやけど!!
その空気を察したのか
「あなたが希望するなら赤ジャージも支給しますよ」
「でも赤ジャージは海外遠征に行った限られた方のものですよね。流石に私が着るわけには…」
「木を隠すなら森の中と言いますし、この面子の中にいるなら赤も選択肢としてはありです。サイズが合えば在庫はあったはずですから遠慮はいりませんよ」
この場面でその提案してくれるのは神以外の何者でもない。
彼女もそれなら、と赤ジャージを追加でもらう話になったようだ。
ということは、たまにお揃いになることがあるってこと…やんな?
「良かったな、毛利」
「ぅえ!?つ、
「お揃いになれるぞ」
「いや、俺は…その」
「嬉しくないのか?」
「嬉しいですけど、えっと…」
まさかの
恥ずかしいから今ここでその話しないでほしいんやけど…。
彼女に聞かれでもしたら、と思ったが彼女がいない。どうやらジャージのサイズを確かめに行ったらしい。
聞かれなくてホッとしたのも束の間、ドアが開いて彼女が戻ってきた。流石着替えるのが早い。
…あれ?
「赤…?」
「はい。サイズ確認したら赤も在庫があったのでいただいて来ました」
「そ、そうなんや…よう似合ってるわ」
「ふふ、ありがとうございます。これでお揃いですね」
「……っ、せやな!」
微妙に肩幅が合わないせいで萌え袖になってる手で口元を隠しながら笑う彼女に庇護欲がこれでもかと沸いてきたので、俺が絶対に守ると心に決めたのだった。
「俺も赤もろてきた~☆」
「種ヶ島先輩も赤になったんですね」
「やっぱみんなとお揃いがええやん!」
「………」
(((あんま