壱頁完結物

「君、本当に中也の妹かい…?」
「はい、初めまして太宰さ…」
「何て可憐な中也とは似ても似つかない美少女なんだ!こんな薄汚い処より善い処を知っているから私が救って」
「させねぇよ!!」
中也の足が脇腹に入り、太宰は転がっていった。

「今後彼奴が近付いて来たら全力で逃げろ」


*****


それから太宰さんは毎日やって来た。
「一緒に心中しようよ」
「心中は一寸…」
「つれないなぁ」
「応じる人は居ないと思います」
そろそろ兄が帰って来る時間だしお帰り願おうと口を開くと、唇に薔薇の花びらの感触がした。
「じゃあ今度一日だけデートしよう」

「…考えておきます」


*****


「手前等を呼んだのは他でもねぇ。奴が遂に動く」
「それは確かですか中也さん」
「不本意だが今回は探偵社と共同戦線だ。奴と、奴の企てを徹底的に潰す。頼りにしてるぜ」
去って行く中也を見送りながら芥川が口を開く。
「人虎、探偵社」
「何だ」

「奴って誰だ」
「知らないのか!?」


*****


翌日。
「済まない、待たせたかな?」
「いえ、今来た処です」
腕時計に視線を落とす中也の妹に声を掛ける太宰。
如何やらこれからデートの様だ。
「野郎巫山戯やがって…妹は手前が来るのを十分も待ってたんだ。手塩に掛けて育てた妹の十分、手前の残りの人生でキッチリ償ってもらうぞ」


*****


「一寸待てよ!え、奴って太宰さん!?」
敦が声を荒げる。隣の国木田も呆れ顔で
「此方は仕事を休んでまで来てやったのに、妹のデートを邪魔するだと?やってられん、帰る」
「おい、俺がいつそんな事を頼んだ」
「?」
「俺は只太宰を抹殺したいだけだ」

「もっと出来るか!!」


*****


「芥川、お前の上司だろ何とか言ってよ」
「誰が芥川だ」その瞬間羅生門を発動させる。
「殺し屋、やつがれ13だ。中也さん、僕も手伝います」
「芥川…」
「以前より第二の妹の様に接してきた彼女に、太宰さんはやらん」

「ん?何か文脈可笑しくないか?」
「何か?」
「あ、いや何でもない」


*****


太宰と妹が歩き出すと同時に物陰から出て行く二人を止められず唖然とする敦。
「何でこんな事に…国木田さん、止めましょう!」
「誰が国木田だ」
独歩吟客!の声で出て来たのは何時もの銃。
「殺し屋メガネ13だ。太宰が何かムカつくから行ってくる」

「もう僕は知らないぞ…」



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