壱頁完結物

談話室に突如響き渡る樋口の悲鳴。
慌てて駆け付けると其処には床にへたり込み何かを抱える彼女の姿。
「如何したの樋口」
「あ…あ、芥川先輩が…」
涙目で振り返る彼女の腕には、とても見覚えのある髪色をした幼児が一人。
「其れは…」
「芥川先輩が!此んな可憐な姿に!」

樋口、鼻血を拭け


*****


私を見た途端、其の幼児は樋口の腕を抜け出し私の処へ走って来て抱っこをせがむ。
「芥川、如何しちゃったの…」
抱き上げながら聞けば真ん丸な目をしばたかせるだけ。
不意にズボンの裾を引っ張られる感覚がして下を向くと、帽子を被った幼児がまたも抱っこをせがんで来た。

「…中也まで」


*****


「重たい…」
流石に幼児二人抱えると腕が辛い。
「あくたがわ、てめえはひぐちのとこいけよ!」
「やちゅがれはこっちがいい!」
其れに二人は何故か喧嘩している。
「こいつはおれのだからだめー!」
「やだやだ!やちゅがれの!!」

樋口がショックで吐血しているのは見なかった事にしよう。



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