壱頁完結物

「お早う御座いま…」
何時もの探偵社、何時もの出勤時間。何時もの…
「しゃ、社長…」
「何だ」
「此れは…如何云う状況ですか…」
私に気付いたのか、周りの人達が私に依って来る。
「あたらしいせんせー?」
「おんなのひとだー!」

「社員全員が幼児化した」
「…はい?」


*****


「せんせー!」
「先生…?何の事…」
「現在探偵社は幼児保護施設、他の社員は全て出張と云うことにした」
「此れ、本当に皆さんなんですか…?」
屈んで幼児の顔を繁々と観察して居ると、不意に手を取られた。
「せんせー、おおきくなったらわたしとしんぢゅーしてね!」

あ、太宰さんだ。


*****


「独歩くんはもう字が書けるのね」
「こりぇくりゃいとうじぇんだ!」
此れ位当然だと云いたいのだろうが滑舌が非常に悪い国木田さん。
子供らしいなと微笑んで居ると
「しぇんしぇーにもおしえたげる!」
と何時もなら見せない無邪気な笑顔が眼前に広がって。

「如何して其の儘育たなかった」


*****


「せんせー」
「乱歩くん」
「せんせーにこれあげる」
手渡された物を受け取ると其れはビー玉。
「先生にくれるの?」
「うん、ひだりてにもっててね」
左手に握らされ首を傾げると
「おおきくなったらびーだまよりきれいなゆびわととりかえてあげるからね!」

「くすりゆびにつけるやつね!」


*****


漸く全員寝付き、子護りも一段落。
「ご苦労だった」
お湯呑みを差し出す社長にお礼を云い口を付けると、社長も隣に腰を下ろした。
「社長もお疲れ様でした」
「…少し肩を貸してくれ」
其の瞬間社長は肩に凭れて眠ってしまった。

普段なら絶対見られない光景を見ながら私も睡魔に襲われる。



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