壱頁完結物

「ねえ、話があるの」
妻の真剣な表情に作りかけの檸檬爆弾をゆっくりと置いて近付く。
「如何したんだ」
「見て欲しい物があるの」
そう云って取り出したのは大きな茶封筒。
それを手に取りながら封筒の下部分に目が行った。
「病院?」
「開けてみて」

少し表情が硬い彼女に嫌な予感がした。


*****


「真逆、何処か悪い処が…」
「良いから開けてってば」
「若しそうなら宇宙大元帥に診て貰った方が」
「基次郎、聞いてる?」
「僕は、まだ君を失いたくない…」
言葉と共に目から涙が零れる。
痛い位に抱き締めれば背をゆっくりと叩いてくれた。

「私は病気じゃないわ。早く開けてみて」


*****


妻に急かされ恐る恐る封筒を開く。
「……これは」
封筒からはペラリと、レントゲンの様な物が姿を現した。
「エコー写真よ」
「この、小さな白い影は…」
「何だと思う?」
「真逆…子供が?」
「大正解」
少し得意気に笑う妻を僕は思わず抱え上げた。

「本当に、僕達に子供が?」


*****


「居るんだって、此処に」
姫抱きされた妻が自分の腹を摩る。
「貴方、今日はよく泣くわね」
苦笑する妻が歪んで見える。
「だって、嬉しいじゃないか。愛する妻との間に、子が…」
「全く。子供は此処に大きいのが居るわよ」
嗚咽を漏らす僕の首に妻が腕を回してくれた。

「僕は、幸せ者だ…」


首領と中原幹部に報告すると二人とも手放しで喜んでくれた。
「定期的に診察しようね」
「宜しくお願いします」
「梶井、任務は行ける時だけで良い。嫁さんを最優先にしろ」
「有難う御座います、中原殿」

その日は細やかな祝杯が上がり、僕は妻に寄り添いながら何時もの様に大声で笑った。


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