壱頁完結物
「龍兄、この前太宰さんには近付かない方が善いって云ったよね」
「嗚呼云ったな」
何時もの如く包帯を巻きながら会話する兄妹。
兄は元気がない妹を心配して心持ち優しく声を掛ける。
「太宰さんから近寄ってくる時って如何したら善い…?」
兄は何とも形容し難い表情をした。
*****
結局怖いと思ったら直ぐに逃げろと助言を貰い、今日も救急箱を持って尾崎の部屋へ向かう。
「尾崎さんこんにち…」
「やぁ、今日は少し早めなんだね」
「お部屋間違えた…」
扉を閉めようとすると反対側から圧力が掛かる。
「一寸!何で逃げるんだい!」
「ひぇ」
隙間から見える包帯が怖い。
*****
「済まんの、太宰が如何しても一目見たいと云うもんでな」
消毒液の残量を確認しながら尾崎が話す。
「此方おいでよ」
手招きを拒否し尾崎にピッタリと寄り添う末妹に溜め息を吐く太宰。
「この前驚かせちゃったから謝ろうと思ったのに」
ガッカリする太宰に少し罪悪感を感じる末妹。
*****
「前も云うたであろう、太宰は悪い奴ではないと。ほれ話してみんしゃい」
尾崎に背中を押され前へとやって来た末妹を太宰は繁々と観察する。
「へえ、お兄ちゃん似か」
「あ、あの…」
「私は美女が大好きでね、是非私と心中を」
「し、心中…!?」
「尾崎さんまた後で来る!」
末妹は逃げた。
*****
「やっぱり太宰さん怖い…」
「太宰が如何した」
逃げた先で織田に会った。
「お出掛け?」
「嗚呼」
「私も行く」
マフィアに入ってから時々織田の買い出しに付き合う事があったので顔見知りの二人は並んで歩き出す。
「それで太宰が如何したんだ」
「太宰さん怖い人…」
内容が理解出来ない織田。
*****
話しながら買い出し先へと向かう二人。
「心中か」
「私まだ死にたくない」
困り顔の末妹から視線を外した織田が立ち止まった。
「織田さん?」
「噂をすれば、だな」
「やあ、また会ったね妹ちゃん」
「ぴぃ!」
「何だその変な叫び声」
末妹は織田の後ろにピッタリと隠れてしまった。
*****
「妹ちゃん、さっきのは冗談だってば」
「冗談って顔じゃなかった…」
「冗談じゃない、だと」
「意訳し過ぎて意味変わってるよ織田作!」
太宰の言葉に末妹が反応する。
「織田作?」
「織田作之助、だから織田作だ」
「私も織田作って呼びたい!」
「佳いぞ」
「織田作に懐いちゃった…」
*****
買い出しが終わり勉強の為に図書室へと向かう末妹。
「坂口さんこんにちは」
「おや妹ちゃん、奇遇だねえ」
「また来るね坂口さん…」
「待って!逃げないで!」
図書室にも太宰が居て扉を閉めようとする末妹と二回目の攻防戦が始まる。
「太宰君、扉は壊さないで下さいよ」
*****
「太宰君が怖い?」
二人に挟まれた坂口が溜め息混じりに呟く。
「太宰さんってきっと分身とか出来るんだ…」
「流石に出来ないよ」
「じゃあ何で私の行く処に何時も居るの…」
「君の行動範囲は大体予測出来るからね」
「何で…やっぱり太宰さん怖い…」
「えっ」
「まるでストーカーですね」
*****
「でも、訪ねて会ってくれないなら行く先で待たないと会えないよ」
「其れはそうですが」
「怖がらせずに会う方法が他にあるのかい安吾」
「あんご…?」
不思議そうな顔の末妹に微笑む坂口。
「私の名前ですよ」
「私も呼びたい」
「一応年上なのでさん付けだと嬉しいですね」
「えぇ…?」
*****
「織田作と安吾狡い!私には懐いてくれないのに!」
「そう云われても…って暴れないで下さい太宰君!」
拗ねて図書室を走り回る太宰を叱りつける坂口。
その手はちゃんと末妹を護っている。
「あっ」
すると勢い余って手首の包帯を本棚に引っ掛けてしまった。
「嗚呼、破れちゃった…」
*****
包帯は大分派手に破れてしまい、太宰は取り替える事にした。
只利き手に巻くので少しやり辛そうだ。
「…太宰さん」
すると末妹が坂口から離れ太宰の近くにやって来た。
「如何したんだい?」
「包帯、巻いてあげる」
「えっ、佳いのかい!?」
「だって巻きにくそうにしてるから…」
*****
慣れた手付きで包帯を巻く末妹に興味津々の太宰。
「中也から聞いては居たけど本当に綺麗に巻いてくれるんだね」
「龍兄と銀姉の毎日巻いてるから」
ふと兄の事を思い出す。
毎日あんなに怪我をして帰って来る原因が太宰であることも思い出してしまった。
「太宰さん怖い…」
「何で!?」
*****
「今日ね、太宰さんの包帯巻いてあげたの」
「そうか、上手く巻けたか」
「うん。綺麗に巻いてくれるんだねって云ってた」
「佳かったな」
「でも毎日龍兄に包帯巻いてる原因が太宰さんだから…やっぱり太宰さん怖い…」
「無理に近付く必要はない」
泣き出す妹に何とか助言する兄だった。
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「嗚呼云ったな」
何時もの如く包帯を巻きながら会話する兄妹。
兄は元気がない妹を心配して心持ち優しく声を掛ける。
「太宰さんから近寄ってくる時って如何したら善い…?」
兄は何とも形容し難い表情をした。
*****
結局怖いと思ったら直ぐに逃げろと助言を貰い、今日も救急箱を持って尾崎の部屋へ向かう。
「尾崎さんこんにち…」
「やぁ、今日は少し早めなんだね」
「お部屋間違えた…」
扉を閉めようとすると反対側から圧力が掛かる。
「一寸!何で逃げるんだい!」
「ひぇ」
隙間から見える包帯が怖い。
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「済まんの、太宰が如何しても一目見たいと云うもんでな」
消毒液の残量を確認しながら尾崎が話す。
「此方おいでよ」
手招きを拒否し尾崎にピッタリと寄り添う末妹に溜め息を吐く太宰。
「この前驚かせちゃったから謝ろうと思ったのに」
ガッカリする太宰に少し罪悪感を感じる末妹。
*****
「前も云うたであろう、太宰は悪い奴ではないと。ほれ話してみんしゃい」
尾崎に背中を押され前へとやって来た末妹を太宰は繁々と観察する。
「へえ、お兄ちゃん似か」
「あ、あの…」
「私は美女が大好きでね、是非私と心中を」
「し、心中…!?」
「尾崎さんまた後で来る!」
末妹は逃げた。
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「やっぱり太宰さん怖い…」
「太宰が如何した」
逃げた先で織田に会った。
「お出掛け?」
「嗚呼」
「私も行く」
マフィアに入ってから時々織田の買い出しに付き合う事があったので顔見知りの二人は並んで歩き出す。
「それで太宰が如何したんだ」
「太宰さん怖い人…」
内容が理解出来ない織田。
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話しながら買い出し先へと向かう二人。
「心中か」
「私まだ死にたくない」
困り顔の末妹から視線を外した織田が立ち止まった。
「織田さん?」
「噂をすれば、だな」
「やあ、また会ったね妹ちゃん」
「ぴぃ!」
「何だその変な叫び声」
末妹は織田の後ろにピッタリと隠れてしまった。
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「妹ちゃん、さっきのは冗談だってば」
「冗談って顔じゃなかった…」
「冗談じゃない、だと」
「意訳し過ぎて意味変わってるよ織田作!」
太宰の言葉に末妹が反応する。
「織田作?」
「織田作之助、だから織田作だ」
「私も織田作って呼びたい!」
「佳いぞ」
「織田作に懐いちゃった…」
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買い出しが終わり勉強の為に図書室へと向かう末妹。
「坂口さんこんにちは」
「おや妹ちゃん、奇遇だねえ」
「また来るね坂口さん…」
「待って!逃げないで!」
図書室にも太宰が居て扉を閉めようとする末妹と二回目の攻防戦が始まる。
「太宰君、扉は壊さないで下さいよ」
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「太宰君が怖い?」
二人に挟まれた坂口が溜め息混じりに呟く。
「太宰さんってきっと分身とか出来るんだ…」
「流石に出来ないよ」
「じゃあ何で私の行く処に何時も居るの…」
「君の行動範囲は大体予測出来るからね」
「何で…やっぱり太宰さん怖い…」
「えっ」
「まるでストーカーですね」
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「でも、訪ねて会ってくれないなら行く先で待たないと会えないよ」
「其れはそうですが」
「怖がらせずに会う方法が他にあるのかい安吾」
「あんご…?」
不思議そうな顔の末妹に微笑む坂口。
「私の名前ですよ」
「私も呼びたい」
「一応年上なのでさん付けだと嬉しいですね」
「えぇ…?」
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「織田作と安吾狡い!私には懐いてくれないのに!」
「そう云われても…って暴れないで下さい太宰君!」
拗ねて図書室を走り回る太宰を叱りつける坂口。
その手はちゃんと末妹を護っている。
「あっ」
すると勢い余って手首の包帯を本棚に引っ掛けてしまった。
「嗚呼、破れちゃった…」
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包帯は大分派手に破れてしまい、太宰は取り替える事にした。
只利き手に巻くので少しやり辛そうだ。
「…太宰さん」
すると末妹が坂口から離れ太宰の近くにやって来た。
「如何したんだい?」
「包帯、巻いてあげる」
「えっ、佳いのかい!?」
「だって巻きにくそうにしてるから…」
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慣れた手付きで包帯を巻く末妹に興味津々の太宰。
「中也から聞いては居たけど本当に綺麗に巻いてくれるんだね」
「龍兄と銀姉の毎日巻いてるから」
ふと兄の事を思い出す。
毎日あんなに怪我をして帰って来る原因が太宰であることも思い出してしまった。
「太宰さん怖い…」
「何で!?」
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「今日ね、太宰さんの包帯巻いてあげたの」
「そうか、上手く巻けたか」
「うん。綺麗に巻いてくれるんだねって云ってた」
「佳かったな」
「でも毎日龍兄に包帯巻いてる原因が太宰さんだから…やっぱり太宰さん怖い…」
「無理に近付く必要はない」
泣き出す妹に何とか助言する兄だった。
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