壱頁完結物
「見て見て国木田君!芥川君の妹ちゃんに贈り物をされたのだよ!」
其の儘天に召されそうな程足の軽い太宰が探偵社に入って来た。
「良かったな」
「それだけ?もっとこう…羨ましがっても良いんだよ!」
ホラホラと煽る太宰に国木田の血液の温度が上がって行く。
「なあ太宰」
*****
「今日は何の日か知ってるか?」
「今日…何の日?国木田君の誕生日?」
「違うわ!」
遂に血液が沸騰し怒鳴る国木田の後ろで賢治が手を叩いた。
「今日は父の日ですね!」
其の言葉に太宰の顔から笑顔が消える。
「えっ…父の日…父、えっ?」
「そう云う事だ太宰。良いから仕事しろ」
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「妹ちゃん。この前は父の日に贈り物をするなんて粋な事をしてくれたね」
お使いに来た芥川の妹は驚いて目を丸くする。
「え、父の日…?」
「一昨日くれただろう?」
「あの…あれ、一寸早いけど…誕生日の贈り物の心算で…」
今にも泣きそうな妹に太宰は顔を真っ青にして謝り倒した。
*****
「今日、来れるかも…わ、判らなかっ…から」
「御免!そんな心算じゃ…一寸国木田君!!」
怒りの矛先を国木田に向けるが涼しい顔で
「確認しなかったお前が悪い」
と云われ後で如何仕返ししてやろうかと考えながら妹に向き直る。
「本当に嬉しかったのだよ。君から贈り物なんて初めてだったから」
*****
「そうだ、おいで」
震える末妹の手を取って自分の机へと向かう。
「折角貰ったから飾ってみたんだ」
何時もは散らかりきっている机が綺麗に整頓され机の端にチョコンと置かれた自分の贈り物が目に入る。
「どう?綺麗に飾ってるでしょ」
「えへへ…誕生日おめでとう、太宰さん」
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