壱頁完結物


「今日はキスの日だそうだよ」
「へぇ」
「昨年は泣き乍ら固まっていたのに、余裕そうだね」
「ふふん、何時までも泣き虫じゃないもん!」
芥川の末妹がふんぞり返るのを微笑ましく見守る太宰。
「じゃあ今年はしてくれるの?」
「うん」
「え!?本当に!?」

「ほら、目瞑って?」


*****


待ちに待ったこの瞬間に、太宰は暴れる心臓を必死で抑えて目を閉じる。
「ちゅー」
其の声と共に唇に柔らかい感触。
「…?此れは何だい?」
目を開けると狐を模した指がぴったりと唇に付いていた。
「奪っちゃった」
フニャリと笑う末妹に太宰は顔を覆った。

「何処で覚えてきたの…可愛い…」



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