壱頁完結物
「昨日面頬をしていない君のお姉さんを見たよ」
「え、銀姉の素顔見たの?」
書類受け取りの為に探偵社に来ていた末妹は敦の言葉に驚きに満ち溢れた顔をした。
「とても綺麗な人だったね」
「でしょ!銀姉とっても美人さんなの!」
「私も何時か銀姉みたいになりたいんだ!」
*****
「お姉さんが憧れなんだね」
「うん、おしとやかで大人の雰囲気があって自慢のお姉ちゃんなの!」
談笑する二人に一人の影が近付いた。
「銀ちゃんの話かい?」
「昨日人虎が銀姉の素顔を見たんだって」
「へぇ、其れは其れは」
「私も銀姉みたいになれるかな!?」
「君だって美人さんだよ?」
*****
「其れに私は其の侭の君が一番素敵だと思うなぁ」
歯の浮く様な台詞を云う太宰に何故か敦の頬が染まっていく。
「でも私おしとやかじゃないし」
「元気な君も可愛いよ?」
「子供っぽいって云われるし」
「其れは此れから身に付いていくさ」
「今日の太宰さん何か優しい」
「“今日の”って…」
*****
「何にせよ、そんなに焦る必要は無いさ」
「そうかな?」
「そうだとも」
自信たっぷりに返事をする太宰の向かいで末妹が俯いた。
「妹ちゃん?」
「えへへ…有難う太宰さん」
恥ずかしそうにはにかむ末妹に太宰は尊さの余り失神した。
「太宰さんて虚弱体質なの?」
「否、違うと思う…」
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