壱頁完結物


「一寸芥川君!」
「…何ですか太宰さん」
目を見開き噛みつかんばかりに歯を食い縛る太宰に、芥川はあくまでも冷静に返事をした。
「妹ちゃんと…まだ一緒にお風呂入ってるって、本当かい…?」
「!」
芥川は戦慄した。
此処で回答を間違えると殺される、と。

「否、その…」


*****


「聞けば、君から妹ちゃんを誘っているそうじゃないか…」
「え、あの…」
誰だ、此の人に情報を流したのは。
此処で彼の逆鱗に触れれば二回殴って五発撃つだけでは済まないだろう。
芥川は必死に考えた。
目の前のけも…基い元上司が納得する言い訳を。

「や、僕は…」
「はっきり云い給え」


*****


「龍兄、一人じゃお風呂入れないんだ」
太宰の後ろから声がした。
二人が視線を向けると、末妹が此方に近付いてくる処だった。
「服が無いと異能が使えないから誰かと一緒が良いんだって」
「…」
太宰は反論出来なかった。

服が無いと云々を云い出したのは、紛れもなく自分だからだ。


*****


「髪の毛綺麗に洗ってくれるし、楽しいから気にしてないよ?」
ね?と笑顔を向けられ、芥川は我に返ったのか必死に首を縦に振った。
「妹ちゃん、今度私とも一緒にお風呂入ろうか」
「なりませぬ」

目を見開き噛みつかんばかりに歯を食い縛る芥川にあくまでも冷静に闘志を燃やす太宰だった。



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