壱頁完結物
「先刻外で手を繋いで歩いてる老夫婦を見掛けたんだ。ずっと仲良しって素敵だよね」
「うん、そう思う」
芥川の末妹と鏡花がそんな話をする探偵社で、聞き耳を立てていた人物が立ち上がって近付いて来た。
「君も将来そうなりたいと思うかい?」
「太宰さん?」
*****
笑顔の太宰を警戒する鏡花。
「勿論なりたいよ!でもそんな人は居ないし想像出来ないなあ」
絵空事の様に語る末妹に太宰の笑みが深まる。
「じゃあ、どんな人とそうなりたい?」
「どんな人…理想の人って事?」
「そうそう」
「うーん、そうだなぁ」
考え込む末妹の隣で火花が散った。
*****
「私歩くの遅いから、待ってくれる人が良いなぁ」
「ふむ、其れから?」
「歩き乍らお喋りしてくれる人かなぁ」
「他には」
「え?まだ云わなきゃ駄目?」
質問攻めの二人にたじろぐ末妹。
然し二人は一歩も引かない。
「背は高い方が良い?」
「兎、一緒に持ってくれる人?」
「それって…」
*****
「二人とも、私と手繋ぎたいの?」
はい、と差し出された手に微妙な顔の二人。
然し直ぐ笑顔に戻る。
「流石だよ妹ちゃん」
「凄い」
「なぁんだ、早く云ってくれれば良かったのに!」
楽しそうに伸ばす其の手に、二人もゆっくりと手を伸ばした。
「一寸鏡花ちゃん」
「右手は渡さない…」
「?」
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