壱頁完結物
「芥川君の妹ちゃんは何時になったら私の気持ちに気付いてくれるのかなあ敦くん」
「またその話ですか…」
会社の机で太宰が盛大な溜め息を吐く。
「面と向かって云えば良いじゃないですか」
「それが出来たら苦労しないよ」
「それは…マフィアの関係で？」
「いや、単に恥ずかしいから」
*****
「恥ずかしい位如何にかしてください…」
今忙しいんです、と面倒そうな敦にショックを受ける太宰。
「一寸！酷いよ敦くん！」
「下らない事云ってないで手を動かせ、仕事しろ」
国木田からも怒られ太宰は拗ねてしまった。
「何だよ皆して…」
「私、結構本気で悩んでるのだけど…」
*****
「こんにちは」
其処に本人が書類を下げてやって来た。
「いらっしゃい」
「鏡花ちゃん！」
手を広げる鏡花の胸に飛び込む末妹。
「久し振りだねー！」
「うん、寂しかった」
「私も！」
会話をしながらチラリと太宰の方を見た鏡花はしたり顔でニヤリと笑った。
「ぐっ…見せつけてくれるね…」
*****
書類を社長に渡し事務所に戻ってきた末妹は不機嫌そうな太宰を不思議そうに見つめる。
「太宰さん如何したの？」
「…何でもない」
「具合悪いの？」
「ううん、元気だよ」
「でも元気ないよ」
首を傾げる末妹に太宰は益々不機嫌になった。
「今日の太宰さん、何か変…」
*****
「君が鏡花ちゃんとだけイチャイチャするから…」
「イチャイチャ？」
頭に疑問符を浮かべる末妹に太宰が突っ伏していた机から起き上がる。
「私とも、してほしいのだけど」
鏡花と同じ様に両手を広げて見せると、末妹は何故か後退った。
「其の儘川に飛び込んだりしない…？」
「しないよ！」
*****
「何で何時もそうなるんだい！」
「今迄の実績が…」
「君を抱えて飛び込んだ事なんて無いよ」
「したいって云ってた」
「云ってな…云ったかも」
納得した太宰に隣の敦が呆れて盛大な溜め息を吐く。
「妹ちゃん。太宰さんは君に甘えたいんだって」
「甘えたい？」
「ちょ、敦くん」
*****
珍しく恥ずかしそうな太宰を益々不思議に思う末妹。
「太宰さん疲れてるの？」
「…まあ」
目を逸らす太宰の真似をして末妹も手を広げる。
「龍兄にも疲れてる時よくぎゅーってやるよ。其れで良いの？」
其の儘広げた腕の中に入ると太宰の肩が跳ねた。
「い、いい妹ちゃん！？」
*****
挙動不審な太宰が珍しいのか乱歩までもが身を乗り出して観察する。
「太宰さんお疲れ様」
背中をポンポンと叩かれ、太宰の目が血走る。
「妹ちゃん…！」
「あぅひぇぇ！！」
感極まって抱き付くと末妹が大袈裟に跳び跳ねた。
「うう…癒される」
「こ、殺される…！」
*****
「だ、だじゃ…」
「うーんもう一寸」
離して、と声を掛けるが全く聞き入れられない。
「ひいぃ人虎助けて…」
「太宰さん、妹ちゃん怖がってるので離してあげて下さい」
「厭だ！折角ハグ出来たのに！」
「ふぇぅ…絞め殺される…！」
「ほら」
「君の中の私は一体如何なってるのさ…」
*****
渋々離すと末妹は半泣きだった。
すかさず鏡花が間に入る。
「泣かせた」
「ええ！？只のスキンシップじゃない！」
「でも怖がってる」
鏡花の着物の裾を摘まむ末妹に眉を下げる太宰。
「判った、もうしないよ」
「違うよ太宰さん」
末妹が太宰を指差す。
「ポケットにナイフ入ってるでしょ」
*****
「ナイフ？…あ、今朝の仕事で持ち出して其の儘だ」
胸ポケットから剥き出しのナイフが出て来て社内はざわついた。
「刺さるかと思った」
「本当に御免。此れは失念していたよ」
ナイフをケースに仕舞い引き出しに入れる。
「でもよく判ったね」
「私も一応マフィアだから」
*****
「でもその前から拒否ってたじゃない」
「それは日頃の行いが…」
「妹、もっと云ってやれ」
「国木田君口挟まないで！！」
益々膨れる太宰。
「怖い事しないなら１日につき１回してあげるよ」
「…！」
末妹からの嬉しい提案に太宰は思わず抱き着いた。
「妹ちゃんが優しい…！！」
*****
その瞬間末妹が飛び上がって鏡花に助けを求め始めた。
「その子から離れて」
「え～鏡花ちゃん顔が怖いよ」
「太宰さん幾つナイフ持ってるの！？刺さる！怖い！」
「え、あ…」
「やっぱりもう太宰さんとはハグしない！」
「あ、妹ちゃん！！」
末妹は其の儘走って帰ってしまった。
*****
「太宰さんにキノコが…」
「それ食ったら楽に死ねるぞ太宰」
其れから太宰は机に突っ伏しピクリとも動かなくなった。
「終わった…」
「仕事道具なんだから仕方無いですよ」
「次来た時に謝れば良いだろうが」
普段はあしらう二人が本気で助言をくれる事に危機感を感じるのだった。
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「またその話ですか…」
会社の机で太宰が盛大な溜め息を吐く。
「面と向かって云えば良いじゃないですか」
「それが出来たら苦労しないよ」
「それは…マフィアの関係で？」
「いや、単に恥ずかしいから」
*****
「恥ずかしい位如何にかしてください…」
今忙しいんです、と面倒そうな敦にショックを受ける太宰。
「一寸！酷いよ敦くん！」
「下らない事云ってないで手を動かせ、仕事しろ」
国木田からも怒られ太宰は拗ねてしまった。
「何だよ皆して…」
「私、結構本気で悩んでるのだけど…」
*****
「こんにちは」
其処に本人が書類を下げてやって来た。
「いらっしゃい」
「鏡花ちゃん！」
手を広げる鏡花の胸に飛び込む末妹。
「久し振りだねー！」
「うん、寂しかった」
「私も！」
会話をしながらチラリと太宰の方を見た鏡花はしたり顔でニヤリと笑った。
「ぐっ…見せつけてくれるね…」
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書類を社長に渡し事務所に戻ってきた末妹は不機嫌そうな太宰を不思議そうに見つめる。
「太宰さん如何したの？」
「…何でもない」
「具合悪いの？」
「ううん、元気だよ」
「でも元気ないよ」
首を傾げる末妹に太宰は益々不機嫌になった。
「今日の太宰さん、何か変…」
*****
「君が鏡花ちゃんとだけイチャイチャするから…」
「イチャイチャ？」
頭に疑問符を浮かべる末妹に太宰が突っ伏していた机から起き上がる。
「私とも、してほしいのだけど」
鏡花と同じ様に両手を広げて見せると、末妹は何故か後退った。
「其の儘川に飛び込んだりしない…？」
「しないよ！」
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「何で何時もそうなるんだい！」
「今迄の実績が…」
「君を抱えて飛び込んだ事なんて無いよ」
「したいって云ってた」
「云ってな…云ったかも」
納得した太宰に隣の敦が呆れて盛大な溜め息を吐く。
「妹ちゃん。太宰さんは君に甘えたいんだって」
「甘えたい？」
「ちょ、敦くん」
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珍しく恥ずかしそうな太宰を益々不思議に思う末妹。
「太宰さん疲れてるの？」
「…まあ」
目を逸らす太宰の真似をして末妹も手を広げる。
「龍兄にも疲れてる時よくぎゅーってやるよ。其れで良いの？」
其の儘広げた腕の中に入ると太宰の肩が跳ねた。
「い、いい妹ちゃん！？」
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挙動不審な太宰が珍しいのか乱歩までもが身を乗り出して観察する。
「太宰さんお疲れ様」
背中をポンポンと叩かれ、太宰の目が血走る。
「妹ちゃん…！」
「あぅひぇぇ！！」
感極まって抱き付くと末妹が大袈裟に跳び跳ねた。
「うう…癒される」
「こ、殺される…！」
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「だ、だじゃ…」
「うーんもう一寸」
離して、と声を掛けるが全く聞き入れられない。
「ひいぃ人虎助けて…」
「太宰さん、妹ちゃん怖がってるので離してあげて下さい」
「厭だ！折角ハグ出来たのに！」
「ふぇぅ…絞め殺される…！」
「ほら」
「君の中の私は一体如何なってるのさ…」
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渋々離すと末妹は半泣きだった。
すかさず鏡花が間に入る。
「泣かせた」
「ええ！？只のスキンシップじゃない！」
「でも怖がってる」
鏡花の着物の裾を摘まむ末妹に眉を下げる太宰。
「判った、もうしないよ」
「違うよ太宰さん」
末妹が太宰を指差す。
「ポケットにナイフ入ってるでしょ」
*****
「ナイフ？…あ、今朝の仕事で持ち出して其の儘だ」
胸ポケットから剥き出しのナイフが出て来て社内はざわついた。
「刺さるかと思った」
「本当に御免。此れは失念していたよ」
ナイフをケースに仕舞い引き出しに入れる。
「でもよく判ったね」
「私も一応マフィアだから」
*****
「でもその前から拒否ってたじゃない」
「それは日頃の行いが…」
「妹、もっと云ってやれ」
「国木田君口挟まないで！！」
益々膨れる太宰。
「怖い事しないなら１日につき１回してあげるよ」
「…！」
末妹からの嬉しい提案に太宰は思わず抱き着いた。
「妹ちゃんが優しい…！！」
*****
その瞬間末妹が飛び上がって鏡花に助けを求め始めた。
「その子から離れて」
「え～鏡花ちゃん顔が怖いよ」
「太宰さん幾つナイフ持ってるの！？刺さる！怖い！」
「え、あ…」
「やっぱりもう太宰さんとはハグしない！」
「あ、妹ちゃん！！」
末妹は其の儘走って帰ってしまった。
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「太宰さんにキノコが…」
「それ食ったら楽に死ねるぞ太宰」
其れから太宰は机に突っ伏しピクリとも動かなくなった。
「終わった…」
「仕事道具なんだから仕方無いですよ」
「次来た時に謝れば良いだろうが」
普段はあしらう二人が本気で助言をくれる事に危機感を感じるのだった。
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